hon-nin編集部ブログ
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本人vol.10、本日発売。
2009.6.10 | 本人編集部
以下、『本人』vol.10 忌野清志郎「ロックで独立する方法」本文より。
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最近ロックがニュースになるのも、ほとんど数字がらみばっかりだよね。GLAYのコンサートに何十万人集まって何百人倒れたとか、B'zのベストアルバムが何百万枚だとか、だれそれの売り上げ総額が何十億だとか。でも、そこで何が歌われているのかとか、音楽そのものの話はまったく出てこない。
つまりあれは「音楽の話題」じゃなくて「統計の話題」にすぎないんだ。音楽そのものは話題にさえなっていない。それをだれも不思議に思わないのか? ミュージシャンたちはそれが悔しくないのか? 自分たち自身や作品のことはなんにも話題にされずに、数字の添え物みたいに扱われてるってのに。自分が歌った歌がニュースにならなきゃ、ミュージシャンにとってなんの意味もないんじゃないのか?
数字を扱うのは業界ビジネスマンたちの仕事だろう? ようするにビジネスマンの業績がニュースになってるだけなんだよ。今月はクルマが何台売れましたとか、今年の経常利益は何十億円でしたとか、それと同じことじゃないか。
少なくともオレは歌でニュースをつくった。ロックンロール・ニュースメイカーだ。「忌野清志郎の『君が代』が物議をかもしてる」っていうニュースのおかげで、歌番組には出してもらえないかわりにニュース番組にばっかりひっぱり出されて、偉い白髪のニュースキャスターやジャーナリストや海外メディアからインタビューに忙殺されたけどさ。それでも国際ニュースだ。
まあ、宣伝費も少ないしプロモーションにもカネをかけられないから、自分でニュースをつくり出すしかないという事情もあるんだけど。でも、歌ったもの、歌ったことがニュースになる――それがロックだったんじゃないかい?
ジョニー・ロットンが『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』を歌ったことがニュースになる、ジョン・レノンが『平和を我等に』を歌ったことがニュースになる......。そうやってロックはニュースをつくり出してきたんじゃなかったのかい?
彼らは数字の奴隷なんかじゃなかった。『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』や『平和を我等に』が何百万枚売れたとか、何十億円の利益をあげたとか、そんなことは全然ニュースになっちゃいない。そんなのはどうでもいいことだった。彼らが歌ったもの、歌ったことがそのまま大きなニュースだったんだ。(後略)
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清志郞さんが唯一残した、"これからの人たち"への、本気の、熱い、メッセージ。
続きはぜひ本誌でどうぞ。
北尾修一