INTERVIEW FILE 001 吉田豪 (プロ書評家・プロインタビュアー)

槙田　一回だけなんですね！なんにも興味ない状態で行って話してみたら興味わくことの方が多いですか？」

吉田　そうですね。普通はブログなりを読み込んでみたら、深く掘りたくなるエピソードが出てきますから。その引っ掛かりのなかった人は、いくら掘っても小型犬とネイルの話しか出てこなくて、大変でしたけど（笑）。

槙田　取材したことがきっかけでプライベートでも仲良くなった方はいますか？

吉田　ボクはあんまりそういう風にならないようにしてて、取材では懐に飛び込むんですけど、終わったら一気に離れます。携帯に入ってる有名人の番号とかも、ものすごく少ないですよ。本当にごく一部そういうのも気にせず突破しようとしてくる人もいますけど、でも本当にごく一部のおかしな人ばっかりです（笑）。具体的には、主演映画を降ろされて監督を刺し、倉本聰さんの家で切腹し、松竹本社に車で突っ込んだことで知られる中山一也さんとか……。

槙田　プライベートで有名人と仲良くならないのは意図的にしてることなんですよね？

吉田　そうです。こっちは誰にも言えない秘密を知りたいわけじゃないんですよ。聞いたことを表に出したくて、それが読者にとってもその人にとってもプラスになればいいなってだけなんで、信頼されすぎると表に出せないことばっかり聞かされるようになっちゃうじゃないですか。こっちは全てを抱え込みたくはない（笑）。

槙田　なんであの話を出したんですか！って言われたら面倒ですもんね。私が記事を書くにあたって、立場上これは書けないだろうなってこともあって悩んでるんですけど、何かアドバイスください（笑）。

吉田　意外と書いちゃっても大丈夫だと思いますけどね。そもそも現役アイドルだからこそ同業者に踏み込んで聞ける話ってたくさんあると思うんですよ。待遇の話とか給料の話とか恋愛の話とか、確実にボクが聞くより相手も話しやすいはずだし。とにかくインタビューするなら変に自粛しないでガンガン聞いた方が良いですよ。あとは相手の原稿チェックに任せて、自分では抑えないほうがいい。これを聞いたらまずいかなと思うことも「これは載せられないかもしれないですけど……」みたいな前振りをして聞くと、「いや、大丈夫ですよ」って言われることも多いし。あとは文章にするときに「（笑）」を入れてギャグっぽくしたりとか、ちょっとフォローを入れれば大丈夫。

槙田　守りに入らない方がいいんですね。

吉田　原稿をまとめる時点でも守りに入る必要はないです。締め切りギリギリで原稿チェックの手間もとれないから最初から無難な原稿にしちゃおうって言う人が意外と多いんですけど、もったいないんですよ。絶対に無理だろうなって思ってたエピソードが意外と通ったりするんです。あとボクがよくやるのが、出せるかどうかきわどいヤバいネタを３つくらい入れといて、全部通ったらラッキー。全部ダメだったら、「じゃあ、２つは譲歩するので１つぐらいは残して下さい」って交渉する。意外といけますよ（笑）。

槙田　へぇー！私もそうしてみます！ 今日取材してて思ったんですけど、質問してる私自身がテンションあがりすぎちゃうことがあって……（笑）。

吉田　自分が暴走するのも現場が明るくなっていいと思うんですけど、それよりも相手が暴走するための誘い水になるべきなんですよ。相手が何か言いやすようなトスをあげるようにした方が良いです。よくある「あなたにとって●●とは？」的な質問は、即答できないからやめたほうがいいですよ。あと、文章にするときに現場の空気感はそのまま生かした方がいいです。ピリピリした緊張感に包まれていたときには、その緊張感を伝えるようにするべきだし、相手がテンション高まってる感じもヘコんでる感じも、そのまま出るようにするべき。

槙田　インタビューを長く続けるコツはありますか？」

吉田　好きなら続くとは思いますけどね。アイドル業よりは長く続けやすい職業のはずなので。あと、相手と仲良くなることを目的にしちゃうのはよくないってボクはずっと言ってて。アイドル取材でも、原稿を面白くすることよりも、アイドルと仲良くなることを目的にしているとしか思えないライターの人がいたりするので、槇田さんにはそういう人の仕事を根こそぎ奪い取って欲しいと思ってます（笑）。同じレベルの技量の持ち主なら、オッサンよりも若くて可愛い女の子のほうが仕事は頼みたくなるはずなので。頑張って下さい！

槙田　勉強になったなぁ。ありがとうございました！

という訳で、今回マキタジャーナル第一回目ということで、吉田豪さんにインタビューさせていただきました！
インタビューなのに私が喋りすぎてるなぁと反省。笑
吉田さんのおかげでたくさん素敵なお話を聞く事が出来ましたが、もっともっと吉田さんのお話を引き出せる方法もあったのではないかと思いました！
でも初回でプロインタビューアーの方に取材できたのは大きいですね。吉田さんの意見も取り入れつつ、これからもたくさんの方の魅力を発見していきたいです！

吉田豪 PROFILE

1970年生。プロ書評家＆インタビュアーにして、現在、雑誌・新聞などでの連載数が20を超えるライター。主な著書は『バンドライフ』、『hon- nin列伝セキララなオンナたち』、『続・人間国宝』、『吉田豪のセメント!!スーパースター列伝』、『元アイドル１＆２』、『人間コク宝』、『男気万字固め』。また日本テレビで放送中の『およよん』、ＴＢＳラジオで放送中の『小島慶子 キラ☆キラ』ほか、テレビ・ラジオ出演も多数。新宿ロフトプラスワンで行われるトークライブ『格闘二人祭!!』、『Ｊさん＆豪さんの世相を斬る』、『松野大介×吉田豪 芸人＆業界人トーク』では司会も務める。最近では単行本のプロデュースも手掛けるなど多方面で活躍。