INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ (ミュージシャン・俳優)
先日PASSPO☆を卒業したばかり、槙田紗子さんによるインタビュー連載「マキタジャーナル」をお送りします。取材や文章を書くことに興味のある彼女が、様々なジャンルの一線で活躍する方々にインタビューし、インタビュー力を鍛える企画です。今回は、現在、メジャーとマイナーの合間を縦横無尽に活躍中のマキタスポーツさんに、槙田さんがお話を伺いました。これまで、2人に面識はありません。Wマキタのスペシャル対談、緊張しつつスタートです。
マキタ 「観客に合わせてサービスのカスタマイズを向上させていくのがアイドルという産業なんで、そりゃ大変ですよ。」
槙田 「だから私は嫌になっちゃったんですよね。PASSPO☆は、すごく自由でしたけど。」
マキタ 「着ぐるみを脱いでしまいたくなったんでしょ?気分はわかります。一番大変な仕事だと思う。だから、アイドルは終わるんです。人間宣言していくんですよ。恋をするというのは、人間宣言だから。アイドルは終わりを愛でる芸能だって僕は言っているんです。やがて恋もするし、脱皮もしちゃうし。その前の段階で、嫌々かもしれないけどその嫌々な部分は俺には見せない!みたいな状態が一番いいんですよ。今しかない瞬間を見ていることが幸せなんですよね。日本人は残酷ですよ。」
槙田 「そうですよね。騙されたいってことですもんね。」
マキタ 「そうそうそう。プロレス的な真剣勝負なんですよね。お互いがお互いを演じて保ってる。」
槙田 「あぁ!」
マキタ 「アイドルが神輿の片方を担いで、もう片方をファンが担いで、幻想というお神輿が上がっているので、アイドルが勝手に下ろしたらダメだよね。」
槙田 「たしかに、、すごい。」
マキタ 「それに比べたらおじさんの苦労なんて大したものじゃないと思いますよ。」
槙田 「いやいやいや。でも、私からすると、アイドルって楽だったなって思います。」
マキタ 「なるほど、逆にね。その考え方もあるわ。」
槙田 「悪口を受け入れられなくなったんです。アイドルだったときは、悪口を書かれるとありがとー!!って思っていたんです。それだけ私に時間を費やしてくれてありがとうって。」
マキタ 「なるほどなるほど。」
槙田 「でもアイドルを辞めると、作った自分じゃなくなっちゃっているので、リアルな悪口と区別ないんですよね。だからすごく傷つきます(笑)。」
マキタ 「これはアイドルにならないとわからないね。それだけアイドルってプロフェッショナルだし、女子プロレスラーなんだね。演じて、悪口も自分の血肉になるんでしょ。ネタにしてくれているってことだもんね。」
槙田 「本当にそうです。アイドルグループは、悪口書かれている子の方が人気なんですよ。」
マキタ 「すごい世界だよね。そのシステムを悪い大人が考えてるんですよ。金儲けの道具なんだから。やがて終わりの来る女性の美を商売に変えてるって意味では花魁とあまり変わらないですよ。」
槙田 「残酷な世の中だ。」
マキタ 「日本人の美の消費の仕方というのは残酷ですよ。だからこそ美しいという面もある。そこで意識高い系の人たちが、アイドルは間違ってると思います!っていう定義を出してきたらおしまいだし。甲子園の野球に対して、あんな炎天下で野球をやるのは間違ってる!って言うのと同じだからね。甲子園は甲子園だからって思うんですよ。あれは日本人にとってものすごいコンテンツだからね。あなたは、人間宣言しちゃったわけでしょ。もう戻れないよね。」
槙田 「はい。」
マキタ 「戻らなくていいと思うけどね。どうですか?生身の人間になってからは。」
槙田 「生身の人間として戦う方が厳しい世界じゃないですか。肩書きとか、グループのブランドとか、自分をカバーするものが何もない実力主義の世界。マキタさんのような自作自演家というものにすごく憧れているんですけど、そこで評価されることってものすごいことなんだと実感しています。自分で生み出したものを貫いてやり続けて、それが人に喜ばれるということは、何よりもすごいことって思っちゃいます。」
マキタ 「あぁー。でも最近思うのは、クライアントがいて、発注があって成立しているという意識が実はずっとなくて。責任が生まれてお金も頂いて、締め切りをこなす。向こうが要求した品質以上のものを提供して、ウィンウィンの関係が築けてハイ良かったですねチャンチャンってことを繰り返してて。それが気持ちよくてやっていたんだけど、俺そもそも何のためにやってんだろうってたまに思うんですよ。どこか流れ作業になっているなという感じもあるし、機械化して心を込めずに一定の水準のものを提供しているというのが続いていくなって思って。でも、そもそも誰からもお願いされてないのにやっていたことなわけだから、よっぽど根が深いものなんじゃないかと思うんですよね。 売れなくなっても、見る人がいなくなっても、ギターをポロんと弾いて作曲活動しているんじゃないかなと思うんです。そこまで深いものじゃないと説得力がないと思うし、そう思うと気が楽になるんです。だから、発注がなくても作っておくことが重要だと思います。そのためには感性を磨かなきゃいけないし、感性を磨くというのは色んなものを見て、色んなことを感じて、吐き出すということです。そうすれば絶対何か付いて来るって僕は思います。」
槙田 「心にグッと刺さりました、、、頑張ります!では最後に、これから挑戦していきたいことはなんですか?」
マキタ 「海外でライブをしたい。一応音楽は国境をまたげるはずなので。その時に、MCで英語が喋れないといけないでしょ。だから、チャレンジしたいことは英語を習得すること。『アリガトニッポーン!ハロートキオー!』とか言ってる海外アーティストいっぱいいるでしょ。言っとけ!みたいな。」
槙田 「めっちゃわかります(笑)。カンペ出てるんじゃないかって思いますよね(笑)。」
マキタ 「そういうレベルじゃなくて、ちゃんと喋れるようになりたい。Fly or Dieで!海外で面白いマリリンマンソンみたいにならないかな。」
槙田 「海外で火がつきそうです!」
マキタ 「ね。しかも日本って海外の評判に弱いでしょ。」
槙田 「BABY METALとかと一緒にやってほしいです。」
マキタ 「そうそうそう。日本で一緒にやるとものすごい叩かれそうだから海外でやりたい(笑)。」
槙田 「ははは(笑)。では、こんな感じで今日はありがとうございました!」
マキタ 「ありがとうございました!」
(※取材後、マキタスポーツさんと私が遠縁にあたることが発覚しました!奇跡的なインタビューでした。)