INTERVIEW FILE 022  大木亜希子
Feb 15, 2020

INTERVIEW FILE 022 大木亜希子 (ライター)

不定期にもほどがある「槙田紗子のマキタジャーナル」、突然の最新回配信しました! 槙田紗子が心から敬愛する皆さんにインタビューする本企画ですが、今回は元SDN48で、現在ライターとしても活躍中の大木亜希子さん。彼女が著する『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』が話題を呼ぶ中、もう一人の元アイドル、槙田紗子が公開トークイベントでぶっこみました。あまりに面白かったので、当日の模様をマキタジャーナルでもさらします。 是非、ご一読ください!

編集=原カントくん 文=槙田紗子
INTERVIEW FILE 022  大木亜希子 写真1
INTERVIEW FILE 022  大木亜希子 写真2

槙田 本当ですね。ちょっと論点ずれますけど、私、亜希子さんと承認欲求について話したくて。

大木 そこ、来たか。話しとくべきだね、そこは。

槙田 そう、すごく複雑なものだと思うし、年とともに変化していく感情だと思うんですけど、少なくとも、芸能をやりたいと思う時点で、承認欲求が人より強いと思うんですよ。

大木 お恥ずかしながら。

槙田 お恥ずかしながら。絶対にそこはあると思うんです。で、私たちは今自分が出役という職業ではないじゃないですか。

大木 今はね。

槙田 はい。でも、その分、昔よりも雑に扱われることもあるわけですよ。タレントさんって、なんていうんですか・・・

大木 スタイリストさんに靴下まで履かせてもらうみたいな。

槙田 そうです。

大木 新幹線のチケット自分で取らないみたいな。

槙田 そうです、そうです。何かでもやってもらうのが当たり前なんですよ。マネジャーさんがいて、明日の予定が来て、言われた通り現場に向かって。でもその分シビア。いつ捨てられてもおかしくない。でも、お金を生んでいる以上は、所属事務所の回している商品になるんで、タレントっていうのは。だからやっぱり、なんていうんですか、丁寧に接して下さる方も多くて。そういう立場から一社会人として周りの大人と対等にお仕事できる環境に行ったわけじゃないですか。で、うわー!こんな扱いなんだ。とか、正直思ったことが私はあったんです。

大木 分かる。自尊心の崩壊ね。

槙田 そうです。そういうのってどう・・・

大木 自尊心の崩壊案件は、あって。紗子ちゃんだったら私は振付師なんだから甘んじて受け入れますとか、私だったらライターなんだから、裏方として撮影では表方の子がいるから黒いTシャツにスッピンでいいやとかね。ちょっとずつそぎ落とされていく何かと消えない承認欲求との戦いはありますよ。

槙田 ああ、やっぱり、ありますか。よかった。

大木 あります。ありますが、今年30を迎えて、紗子ちゃんは今26?

槙田 26です。

大木 すごくそれって戦いだったから、文章を書いたりしてるんですよね。そういうことが恥ずかしい。でも、消えずに承認欲求はある。でもきっと皆さん、いっぱいある。皆さん、同じような気持ちをお持ちだと思うんですよ。全然違う職種と立場だけど、仕事で認められたいとか、自分の作った何かをクライアントに評価されたら嬉しいじゃないですか。そう考えると、共通点があるんですよね。一般職の方々と。全然、何も特殊な職業じゃなくって、アイドルってむしろ10代のうちから社会の縮図を経験しているから、皆さん個々それぞれ発育レベルは違うけど、だから社会に出てからも適応できるかた方もいるんじゃないかなと思うんです。承認欲求案件、あとね、芥川賞作家の羽田圭介さんという方が『アイドルやめました。AKB48のセカンドキャリア』をご自身のYouTubeチャンネルで紹介してくださったんですよね。羽田さんが、この本に出てくる元アイドルの保育士、アパレル社員、ラジオ局の社員などのアイドル時代から現在に至るまでの過程は面白かった。面白いけど想定内。それよりも面白いのが元アイドルの大木さんが、同じ境遇だった女の子たちの話を共感して、一つ一つ自分の当時のもやもやとかを消化していくその過程が面白いんだと仰っていて。私びっくりして。当時、自分は取材を通してこの子たちの人生を伝えるっていう使命しかなかったのに。なぜなら、他者と分かり合うことが一番の快楽だからであるって、羽田さんがまとめてくださったんですよ。分かり合えるっていうのが、一番この本の魅力であるって言ってもらったのが、すごく嬉しいし、なんだろな、紗子ちゃんと私も今こうやって分かり合って気持ちがいいし、お客さんの中でもアイドルやったことのない方々が、99パーセント、100パーセント?と思うけども、だから最近、自分の中で、どんな職業も一緒じゃないか説がある。

槙田 確かに。自分が経験できることって、本当に少ないじゃないですか。人生の選択肢は、すごくいっぱいあると思うんですけど、自分がその中でどういう境遇に出会って、どういう人と出会って、何になりたいと思ってってどんどん狭まっていくから。

大木 年齢とともに選択もね。

槙田 それでいて、若ければ若いほど自分の世界が全てだし、私も最近そこからねけてきた感はあって。今までは自分の生きてきた世界しか見ようとしてなかったんですけど、これって何千何万通りあるうちの一つをたまたま歩んでいるだけであって、広い世界の本当にごく一部なんだなっていうのをやっと感じるようになりました。

大木 分かる。自分をいろんな社会のパズルの本当に1ピースに過ぎないんだなと思ってからが、人生だから。

槙田 先輩。

大木 すいません。あとね、ちょっと視点ずれちゃうんだけど、元アイドルあるあるで、メンバー同士で仲悪かったんでしょう?って私、アイドルやめてから、おそらく1兆回ぐらい聞かれたんだけど。真顔でそんなことないですよ。みたいな。悪くないの、全然。なぜなら、乗り越えるべきは他にあって、もちろんその相性の合う合わないは、あるけど、もっと、運営の方々が提案してきた厳しい企画に対して、みんなで乗り越えなきゃいけないのに、なんで仲悪くなる必要があんの?って感じなんだけど。PASSPO☆の子たちについても、周りから言われる?

槙田 言われますよ。言われますけど、私も流してます。

大木 あのさあ、ぶっちゃけあの質問されると、イライラしない?

槙田 はい。

大木 ええっ、みたいな。どんだけスキャンダラスに持っていきたいの、この人、みたいな。

槙田 じゃ、職場の人全員と仲がいいですか?って、聞きたくなる。

大木 賢い。そのとおりだよね。会社員に置き換えてみてよってね。

槙田 あなたは全員とうまいことやってんの、へえ〜って。

大木 それいいな。逆に感心するやつね。

槙田 アイドルってそういうイメージがあるんでしょうね。昔のアイドルさんとかが、昔仲悪かったピソードをよく話すじゃないですか。

大木 ありがち。

槙田 そういう話って世間からはウケるし、女の子のギスギスってなんとなく面白そうじゃないですか。確かに、面白いこともあるんですけれど。だからそういうふうに、聞きたいのかな。でも、私はアイドルとしては最大で10人組しか経験してないんですよ。PASSPO☆がデビュー時10人で、私が抜けたときは、私含めて8人だったんです。SDN48さんみたいな大所帯グループを経験したことがないので、中の雰囲気は全然違うんだろうなとも思うんです。これは、失礼な言い方になっちゃうのかもしれないですけど、グループでテレビに出てるのに自分は映らないことがあり得ちゃうわけじゃないですか。

大木 全然ある。歌詞が分かんなくても、ほわんほわんほわんみたいな感じで。歌わなきゃいけないとき忘れちゃっても、目立たないから多少は誤魔化せるみたいな…。

槙田 PASSPO☆ぐらいの人数だと、テレビに出たら1カットも映らないっていうことはないんですよ。

大木 そうだよね。

槙田 そう。だから、どっちがいいとかってないんですけど、48系のグループとかだと、もう規模が違うじゃないですか。ドームとか武道館とかで、ワンマンするのが当たり前で、スタッフさんの数もものすごくて、で、曲ごとに衣装があるみたいな、そういう世界じゃないですか。でも、私たちは、全員目立てるけど、中堅なんですよ。それは単純にそこまで行けなかったっていうのは、もちろんありますけど、ファンの人に全員の名前を把握していただける状況ではあるけれど、ドームやアリーナでボンボンできるわけではないし。どういうアイドルを経験してたかで、その先の人生への影響はまた変わってくるだろうなと思うんです。

大木 そうだね。グラデーションがあるよね。

槙田 だから、48さんとかの握手会とかって、行ったことないですけど、ものすごいんだろうなっていう想像だけはあって。

大木 握手会もそうだし、NHK 紅白歌合戦の楽屋は、取りあえず業務用のでかいエレベーターで、普段ピアノとか運搬するようなエレベーターでメンバーが一気にガコンと運ばれたり。現場で目立つのはきっとセンターである芹那さんや野呂佳代さんや大堀恵先輩。素晴らしい人たちですけど、ロケバスに乗りながら、さて、私は今日どうしようかな、みたいな。多分ワンカットも映んないわぁと思って、哲学書読み始めたり。それでライターになったんだよね。端的にいうと、本当、そう。

槙田 幼少期から本はよく読まれていたのですか?

大木 幼少期からずっと本好きだったけど、アイドルやってて、世の中のブームの渦中にいながら、どこか人事だったっていうか、そうじゃないといられなかったんだと思う。ちょっと斜に構えて、今回の選抜こんな感じねって、自分も当然、頑張ってたんだけれども、あまりにも取り巻く環境の厳しさから、記憶もバコッて抜けてるところもあるし。どんな職業も大変だけど、自尊心の崩壊レベルでいうと、ね。だって、元々我々は承認欲求が強くてアイドルグループに入ってるのに、それが認められない切なさったらね。卑下でも何でもなくて、そこからどう這い上がるかじゃないですか。

槙田 亜希子さんは女優としても活動されてたじゃないですか。1人の活動から、大所帯に入ってっていうのも、ご苦労があったんだろうなっていうのは、思っていて。

大木 ありがとうございます。

槙田 女優さんって1人だから、周りの意識が全部自分にガッと来るわけじゃないですか。それが何十分の1に変わってしまうっていう、カルチャーショック的なものは、あったんじゃないのかなと勝手ながら想像してしまいました。

大木 あります。もともと大手の事務所に入ってたから、ファンの方と会う機会もないし、バーターでいろんなドラマにぶち込ませてもらって。でも、ドラマの制作サイドから『もう一度起用したい』と思わせられなかったのは自分の責任だしっていう、特殊な世界に早くもいたんですよね。だからぶっちゃけ、ファーストキャリアはそこなの。

槙田 そうですよね。私、『野ブタ。をプロデュース』、ドンピシャで見てて、実は、『ダウト』で共演させて頂く前から知っていたんです。

大木 ありがとう。

槙田 奈津子さんという双子のお姉さんがいらっしゃって、その舞台には奈津子さんも出演されていたので、あ、奈津子さんと亜希子さんだ!って思ったのを覚えていて、SDN48さんに入られていることを知って驚いた記憶があります。アイドルになったきっかけは何だったのですか?

大木 そこだよね。やっぱり大手の事務所に14、15から入って、父親が早く亡くなって、給料をもらえるとそこで、家庭の援助できるな、みたいなとこが、お涙ちょうだいじゃないけどあって。そこで15ぐらいから、家にお金を入れながら、お給料もらって連ドラに各局出してもらったの。でも、各局の連ドラに出してもらったあとに、さあどうする、これから亜希子ちゃんの実力だよって言われて。お芝居も別に14、15からぽっと入ったから、すぐうまくなるのは難しくって、毎日体重測定して、目黒区民センターに放課後泳ぎにいって、ブロッコリー1つで1日過ごしてとか、体脂肪0.1グラムでも増えると不安になってたし。ちょっと特殊な高校生活だったんですよね。

槙田 特殊ですね。

大木 当時は恋愛も禁止だったし、男の子ともあんまり話さない生活が続いたかな。だからこうなっちゃうったかな、とかいって。そういうのも書く活力になっていたと、今でも感謝しているし、それで紗子ちゃんみたいに覚えてくれてる人もいる。でも、それでアイドルなりました、おこがましくも、今まで見てきたものもあるし、私は芸能界知ってるつもりですよ。みたいに思ってたんだけど、全然勝手が違って、正直、「私のほうが可愛いのになんで!」と思うメンバーのほうが、人気があったりして…。ごめんね。でも、そういう子が・・・

槙田 そういうコンセプトですもんね、秋元さん的に。

大木 そうそう。なんていうのかな。みんな武器が違うみたいな。そこが言いたかった。で、やっぱ大変だったね。自尊心、何度も崩壊したし。でもね、人気がある子たちはみんないい子だし、よく見てると、めちゃくちゃファンの方々に対するサポートが手厚い。24時間体制みたいな。

槙田 24時間体制(笑)。

大木 できない、できない。ちょっと暗い雰囲気が売りの子だったら、ファンの方々も少し影があったり。キャラによってファンの人もカラーが違ったりして、この世界はなんなんだ!みたいな。