太田出版ニュース
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=15号は、特集の頁数が増え、特別増頁号になりましたので、本体価格が1048円、定価は1100円に致しました。どうぞご理解をお願い申します。=
【特集 賀川豊彦 その現代的可能性を求めて】
日本近代を代表する社会運動家にしてキリスト者、ベストセラー作家でもあった賀川豊彦は、戦後社会においてほとんど忘れ去られている巨人です。貧困救済から始まった彼の膨大な業績の中に何を見出すのか、経済恐慌と格差拡大の現在、私たちの歴史的想像力と社会的構想力が試されています。
今年は賀川豊彦が神戸のスラムに飛び込んで救貧活動を始めて百年を迎えます。賀川の創設による生協やキリスト教団などが、様々な記念事業を予定しています。賀川の思想と信仰の根幹には、友愛=相互扶助のエートスがあり、彼の全運動を駆動させていたことが改めて注目されることでしょう。
賀川豊彦の名前を知らないでも、日々の生協運動に関わる女性たちは一千万人のオーダーに達しています。賀川の播いた種は各地各領域で枝葉を伸ばしています。今こそ、それらの意義を吟味し、より大きな展望と連携の中に据え直すことは、苦悶する資本主義と国家を内発的に超えるオルタナティブな回路を準備するでしょう。本特集がその一端に連なることを願っています。
是非、手にとってお読み願います。
特集の主要な論文は次の通りです。(敬称略)
・ 山折哲雄 「抑圧された賀川思想の回帰」
・ 田中康夫 「〈KOBE〉、その引力と斥力」
・ 加山久夫 「賀川豊彦の〈神の国〉を考える」
・ 栗林輝夫 「不況の中で賀川の神学を再読する」
・ 倉橋正直 「賀川豊彦と満州キリスト教開拓団」
・ 増田大成 「今、生活協同組合の賀川豊彦を問う」
・ 澤口隆志 「賀川豊彦と生活クラブ運動」
・ 小南浩一 「賀川の労働運動論と〈社会化〉主義」
・ 池田雄一 「留保なき救済とメロドラマ」
・ 外山恒一 「ファシストの目に映る賀川像」
・ 杉浦秀典 「〈賀川豊彦献身100年記念事業〉の概要紹介」
【巻頭論文】
柄谷行人 「普遍宗教は交換様式Dとしてのみ出現した」
連載『世界共和国へ』に関するノート〈11〉
相互扶助的な社会運動としての普遍宗教は、どんな存立条件の中で成立するのか。生産様式論に変わる交換様式論を提唱する著者は、賀川豊彦の信仰と社会運動を駆動させた普遍宗教成立の謎を解き明かす。
【連載】
・ 上野千鶴子 「ケアの社会学 第三部結び 次世代福祉社会の構想」
第十三章 当事者とは誰か?
・ 山下範久 「ポスト・オリエント 第五回」
資本主義の再歴史化
・ 鈴木一誌 「ドキュメンタリーの視覚 9」
『かつて、ノルマンディーで』
【お知らせ】
季刊『at』はこれまで(株)オルター・トレード・ジャパン(ATJ)と太田出版の共同事業として刊行されてきました。その共同事業はこの15号で終了し、16号以降は太田出版の単独事業として刊行します。秋山眞兄発行人を初めとするATJやAPLA(アプラ)の関係者の方々のご厚意とお力添えにお礼申します。
編集体制の一部組み替えがあり、次号16号の発行日を7月中旬と致します。それ以降、季刊で刊行致します。詳しいご案内は6月に太田出版のホームページ上でお伝えします。
読者や執筆者を始め、皆様方の変わらぬご支援とご批判を改めてお願い致します。(高瀬)
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