クイック・ジャパン vol.86 のコンテンツ

86号紹介「未来は今」

2009.10.09

86QJ03.jpgただ、「伝える」ために

 

表現において、何かを「伝える」ことは難しい。
人目につけばつくほど、時が経てば経つほど、陳腐に近づいてゆく宿命を背負っている。
どんなに難解で伝わりづらいメッセージがあったとしても、めちゃくちゃ売れてしまったら"ベストセラー""名盤"など、シンプルな括りに収斂されてしまう。
村上春樹の『1Q84』しかり、ビートルズの『LET IT BE』しかり。
同じように、「ナンバーワンよりオンリーワン」「記録より記憶」などの表現も、言葉としては豊かな意味を含んでいるのに、いまや便利なだけのキャッチフレーズとなっている。
こうして表現は、広まれば広まるほど単純化され、意味合いが薄まり均一化されていく。
こんな時代に、何かを「伝える」努力をしている送り手たちの苦労は、並大抵ではないだろう。
そんななか、ある1本のドキュメンタリー番組が放送された。
森山未來が神戸の街を歩き、1995年1月17日に起こった阪神大震災をナビゲートした、『未来は今~10years old,14years after~』(NHK)。
番組内番組の制作過程を追うという特殊な手法で「伝える」ことに真正面から取り組んだ意欲作だ。
試行錯誤の軌跡をも組み込んだ本作品で、僕たちは「伝える」ということの新しい挑戦を見た。(文・浅野智哉)

【「未来は今」番組HP】

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