公開=7月3日
『でんぐばんぐ 下』発売を控えた6月中旬。炎天下の代々木公園で、顔色の悪いふたりの漫画家が地べたに座っていた。ひとりは『でんぐばんぐ』作者、ニコ・ニコルソン。もうひとりは、『でんぐばんぐ』ファンを公言する押切蓮介。健康的な太陽の光と活気ある若者たちに心をむしばまれつつ、アルコールの力を借りたふたりの、漫画界ぶっちゃけトークがここに始まります……!
公開=7月3日
『でんぐばんぐ 下』発売を控えた6月中旬。炎天下の代々木公園で、顔色の悪いふたりの漫画家が地べたに座っていた。ひとりは『でんぐばんぐ』作者、ニコ・ニコルソン。もうひとりは、『でんぐばんぐ』ファンを公言する押切蓮介。健康的な太陽の光と活気ある若者たちに心をむしばまれつつ、アルコールの力を借りたふたりの、漫画界ぶっちゃけトークがここに始まります……!
ニコ 『でんぐばんぐ上』を読んだ押切さんから、急に「面白いじゃん! 下巻いつ出るの?」って連絡が来て。
押切 アシスタントさんがすごく推してて、それにつられて読んだら良かったのです。
ニコ でも、その時は「上巻があまりにも売れてなくて、出ないかも」って伝えたんです。そしたらなんだかんだで下巻発売が決まって……。
押切 まだサイン本が2冊くらいしか売れてない時に、かわいそうだなと思ってすぐ買いました。
ニコ 「ニコさん、今、まだ残り498冊だったよ」とか言ってきたよね。「でも大丈夫、カウンターがおかしくて、すぐ反映されてないだけだよ」とか、すごいフォローしてきて。押切さんに優しくされるとすげえ不安になるんです。
押切 あの時はやられてたからね。
ニコ そうだね。体がずっと斜めだったもんね。
ニコ この前、押切さんと久々に会って飲んだんですけど、柱がないと立ってられないって言って、飲んでる間ずっと柱にもたれてて……。
押切 もう絶不調だったからね! ちょっと体調を崩してたんで。15年間やってきてあんなの初めてだった。
ニコ ほんとあれ以上のものはなかろうっていう。
押切 もう大変だったもん、最近まで……。「そんなとき『でんぐばんぐ』を読んで僕は元気になりました!」っていうことにしときましょうかね。
ニコ そういうことにしといてください。
押切 しかし、このHPのカウンター、残酷ですよね。
ニコ そう。公開処刑! 太田出版は私を殺す気ですよ! さらにこんな炎天下の公園で対談させてね、トドメをさす気だなと。
押切 ほんとひどいよ!(笑)
ニコ 私、サイン本の冊数カウンターも怖くて見てなくて……。
押切 現在あと何冊か言ってあげようか?
ニコ やめとくれ!!
押切 単行本が売れないっていうのはきついよね。本当。
ニコ 『でんぐばんぐ 上』が売れなくて、さらに「感想がないって、こんなに辛いんだな」と思った。
押切 エゴサしてる?
ニコ エゴサしても情報サイトしか出てこない。押切さんはエゴサしないでしょ?
押切 そうだね。癒されようと思ってやっても逆効果なことがよくある。
ニコ あるね……。
押切 承認欲求は三大欲求と一緒でね、次の日になったらゼロになっちゃう。だから毎日エゴサしても意味ない。
ニコ だからと言って身内が褒めてくれても素直に受け止められないんですよ。「噓だ!」「それは憐れみか!」みたいな……。
押切 まあね。ニコさん、やっぱ卑屈なんですよね。漫画にもすごいそれが表れてる。
ニコ 私と押切さん、そこがちょっと似ていませんか……。川崎の空気がそうさせるのかなぁ。
押切 え? あなた川崎に縁があるの?
ニコ 私、小学2年まで川崎に住んでましたよ。多摩川沿いで遊んでたもん。
押切 おれも多摩川沿いで遊んでたよ。
ニコ 『ナガサレール イエタテール』を描いたから生まれも宮城だと思われてるけど、実は川崎生まれなんですよ。
押切 ああ……どおりで……たちの悪いところがちょっと似ているから。
ニコ 似ているねえ……。でも、押切さんにとって、売れない時代ってずいぶん前のことでしょ?
押切 そんなことありませんよ。ギリギリです。新人時代って未来があるじゃないですか。「今がだめでも、これから売れるぞ!」って。
ニコ 30代で新人の私にも、まだ未来あるかな……?
押切 『でんぐばんぐ』がダメだったらジワジワくるぞぉ。次の作品もダメで、いよいよ40代が近づいてきて、独身で。目尻もどんどん下がってきて……。
ニコ ほんとゲスいな!! でもあんな弱った押切さんに対談をお願いした私もゲスだ……!
押切 それはいいんだよ。
ニコ すまないね……。
押切 うん、今日は気分転換になってるよ(笑)。
ニコ 下巻、どうすれば売れるかなあ。やっぱり『ナガサレール イエタテール』の映画化が決まってればよかったな。
押切 そんな話があったんだ?
ニコ うん。でも実現しなかったね~。予算が集まらなかったみたい。
押切 僕もそういう経験3回くらいある。期待しちゃダメだよ。
ニコ もう「わーい!」ってなって、脚本チェックしちゃってさ。家族にも見せて、「婆ルの役、樹木希林だよ!」とか言っちゃってね。
押切 再始動する可能性もありますよ。一旦ペンディングになったけど、また話が動いたって話をよく聞くし。
ニコ 慰めなくていいよ。本当に悲しくなるから。
押切 そうだね。僕たちは粛々と面白い漫画を描く側だから。映画化のためにやってるわけではないのですよ。
ニコ はい。粛々と描きます。
押切 『でんぐばんぐ』は田舎コンプレックスの塊みたいな話だよね。これってほぼ事実なの?
ニコ 半分ぐらい実話です。
押切 星さんは実在の人?
ニコ モデルはいるけど、実際はそんなに仲良くなかったの。星チカコって名前はまんまとってます。
押切 そうなんだ。(下巻のゲラを読みつつ)あ、この子かわいいよね。すごい性的な香りがします。
ニコ 大河内?
押切 なんかこういう、ジト目の子が好きなんすよ。アッ動いてるな、こっちに来てくれてるんだな、廊下を歩いてんだな、こっち見てんだなって……。
ニコ どういうことなの?
押切 慈しんでるんですよ。
ニコ あ、ありがとう……。
押切 ジェジェ先輩とはそのうち付き合い出したりとか?
ニコ それはないですね。『でんぐばんぐ』には恋愛要素がないんだよ。そういう展開があってもいいなって思ったけど、恋愛はどう描いていいかわかんなくて。
押切 描くべきだよ、面白くなるよ!
ニコ 私自身…恋愛経験が……そんなに…無いんですよ……(鬱々)。
ニコ 押切さん、オシャレになりたいって思わなかったですか? 学生時代。
押切 思ったよ。原宿で、なんかオシャレなものねえかっつって木で出来てるネックレス買った。
ニコ ああ、どんなデザインなのか手に取るようにわかる!(笑) ちなみに私も『鉄コン筋クリート』みたいなゴーグル買った!
押切 生まれ持った才能がないんだよね。
ニコ オシャレの才能、ないね。
押切 当時、女性と会う時はオシャレしなきゃって脅迫観念があってね。
ニコ そりゃあるよね。
押切 でも結局、諦めたんだよね。センスがなくて。
ニコ 諦めちゃいました?
押切 興味がないのに無理にオシャレになろうとしてもね。
ニコ そうそう、もともと可愛い子には何をしてもかなわないし。でも悪あがきするんですよ。椎名林檎とかYUKIになりたいって……。
押切 うんうん。
ニコ 若い頃はまねしたりしたけど、今はもうやらないね。ちなみに男子にとって憧れの人っているんですか?
押切 僕は浅野いにおになりたい。
ニコ こういう時は高確率でいにお先生が出てくるんですねえ。花沢健吾先生も「彼が天才モーツァルトで、俺はサリエリなんだ……」って言ってた。
押切 あはは。
押切 なんでサイン会やらないの? やりなよ。「顔出ししたことない女性漫画家」、これだけで売りになるよ?
ニコ 顔面一発勝負だね!
押切 まあ精一杯化粧することだね。
ニコ サイン会は、『でんぐばんぐ 下』がバカ売れしたらですね。ちなみに押切さんは、サイン会の時は絵も描きます?
押切 描くよ。だからひとり10分くらいかかっちゃう。
ニコ ファンとお話もするでしょう?
押切 そう。だから少しお話もして。
ニコ ……ああ、サイン500冊分か。どうなるんだろう……(唐突に『でんぐばんぐ 下』のサインのことを思い出して)。
押切 僕、今朝、10冊サイン描きながら気が狂いそうになったよ。
ニコ 10冊で嫌になっちゃうの?
押切 前はサイン会に来てくれた人に、ちゃんとした絵をあげたくて……。
ニコ 押切さん、そんな気持ちあるんだね。
押切 あったんだよ! すごい丁寧に描いた色紙を100枚用意して「好きなのを選んでください」って。そうしたら、あとはその人の名前を書くだけだからパッと終わるじゃないですか。時間も短縮できるし、納得いく絵も提供できる、画期的なシステムですよ。それぐらいアグレッシブにやってた男が、今や10枚で疲れる……。
ニコ あはは。何があったんだろ?
押切 年ですよ。
ニコ 私もこれから命を削るんだな……。
ニコ 押切さんにはフォロワー5万人超えてないとツイッターで話しかけちゃいけないんだよね。
押切 そんなこと言ってないよ!
ニコ 私の卑屈な思い込みです。押切さんの『狭い世界のアイデンティティー』を読んでそう感じたんだよ。あんな面白いもん描いたんだもん。もっとドヤって。ドヤァァァってしていいですよ! 私は本屋で買ってこれ(持参)読んだけど、ここではブックオフで100円で買ったってことにしといてください。
押切 なんですかその対抗意識。読んでみてどうでした?
ニコ 面白かったさ! 一番、描かれたくないであろうドロッドロの部分を描いてるなと。「わかる」って言っちゃうのもイヤだけど「わかる」……! 今後、出版社のパーティーに行ったらこの漫画の情景が浮かんでしまう……。
押切 何を求めてパーティー行くの?
ニコ ご飯を食べに……。私はまさに、このマンガの中で「寿司だ! ステーキだ!」って言ってる輩ですよ。こういうパーティーって、呼ばれててもその出版社に貢献してないと行っちゃいけないのかな? って遠慮してたけど、今年は『ハツキス』でちゃんと連載してるから行けるぞ! と思って。
押切 でも、行ったところでビンゴと飯くらいでしょ。
ニコ ビンゴもさ、壇上に立った時「ニコ・ニコルソンです」なんて言ったら「あいつ誰だよ?」ってなるわけですよ。
押切 いやー荒んでますね。30代も後半になってくると漫画家って脂が乗って上昇していくか、退いていくかどっちかなんですわ。僕たちはどっちなんだろうね。前に押見修造くんと清野とおるくんと一緒に飲んだ時も、全員文句ばっかりですよ。
ニコ みんな売れてんだからいいじゃん!
押切 でも、彼らは自分よりも上の立ち位置の人を見てる。まだ上にいけるはずだ、って気持ちが強すぎるから、卑屈になっちゃうんだよね。下の世代の人たちからすれば神様みたいな存在なのに。
ニコ 私が『マンガ道場破り』で取材させてもらった先生方も常に上を見てる感じだったなぁ。三浦健太郎先生とか、羽海野チカ先生とか、第一線で活躍してる作家さんばっかりだけど。常に上を見てる。
押切 大御所の作家さんでも、誰ひとりとして満足してる方いなかったでしょ?
ニコ ハングリー精神がものすごかったね。負けず嫌いの塊みたいな感じ。
押切 「あんたくらいまでいったら安泰でしょ」って思うけど、そういうもんなんですよね。
ニコ 羽海野先生は単行本につける特典ペーパー1枚でも妥協しないんだよ……。新人マンガ家ならそこは当然めっちゃ頑張るじゃないですか、読んでもらおうと思って。でもベテランになっても初心を忘れてないというか、驕らないというか、新人に負けないぐらいやっちゃうという……。
押切 売れる売れないじゃなく、どれだけ仕事に賭けてるかってことだね。満足しちゃいけないんだよ。漫画家で満足してる人、見たことないもん。無間地獄ですよ。こうなったらもう辞めるか死ぬかしかないね!
ニコ でも辞めたって次がないよね。
押切 そうそう、漫画家辞めることを想像すると怖いよね。潰しがきかないから。
ニコ ほんとですね。
押切 「漫画辞めた」って明確に言ってる人はあんま見たことないな。
ニコ 言ってないだけで、自然と描かなくなるのかな?
押切 でもたぶん、描くってことから抜け出せないんだよね。描くのが好きだから。
ニコ 結局そうだよね。もういやだ、疲れたと言いつつ気付くと描いてるんだよね。
押切 でも僕、漫画描くの未だに苦しいですよ。
ニコ 絵だけとかのほうがいい?
押切 その絵が厳しい。いつまでたっても成長しないし……。でも、地道に頑張ります。とりあえずは自信をつけたいです。
ニコ こうして一生、満足できない気がするねぇ。
押切 ニコさんは何歳で死ぬ、みたいなプランはあります?
ニコ ないよ!
押切 僕自身はおそらく42歳くらいで事故死すると予測してます。一緒に42歳でどう?
ニコ やだよ! 生きたいよ! まだ楽しいこと何にもしてないよ!
押切 これからやりたいことは?
ニコ えーーーと、1度で良いからすげーちやほやされたい!!
押切 じゃあCOMITIAとか即売会で本を売ればいい。ファンと交流して肉声を聞いて、パワーを得られるかも。
ニコ 元気出るかなあ。
押切 元気出るよ。「サインください!」って言われたりしてね。ただ、どっと疲れる。自分で描いて、売って、サインもして。
ニコ そうだね。ライブ感がほしいな……。「おまえが必要だ!」ってこう……実感をね……。ええと、売れてない漫画家はどうすればいいんでしょう。
押切 やっぱサイン会とCOMITIAだね。
ニコ COMITIA、行ったことあります?
押切 あるよ。清野とおるくんと一緒に同人誌作ってさ。
ニコ あっ、私もそれ読んだ!
押切 僕と清野くんの漫画を、交互に載せたんですよ。僕たちは同列ですよってことをアピールするために。でも僕らの漫画を交互に読むと、酔ってくるんですよ。和食と洋食を交互に食わせられてるみたいな。
ニコ たしかに胸焼けはした(笑)。面白かったけど、ひとつひとつの味が濃すぎて。
押切 その同人誌を意気揚々と500冊持っていって。でも本当に大変でした。描いて作って運んで自分で売るんですから……。
ニコ 接客も自分でするんだもんね。でも、面白い漫画を描かないと結局人は集まらないわけで……。
押切 そうだね。ちやほやされる漫画を描けばいいんだよ。だからやっぱり、次はキャラものだね! ニコさんはあなた本人が愛されたいのか、あなたの描いたキャラを愛されたいのか、どっち? 僕は「キャラが好きなんです」って言ってもらった方が気持ちいい。
ニコ 今までは自分を描くエッセイが多かったから。自分が描いたキャラを愛してもらえるのは良いなあ。
押切 自分のことも褒められてる感じがする。僕は自己評価が低いんで、直接褒められてもあんまりピンとこなくて。
ニコ キャラものだと講談社の女性誌で連載してたマンガがあったな……。河童の小学生がカエルの交尾を見て欲情する話。
押切 キ×ガイだな!
ニコ オリジナルのキャラはそれ以来ずっと描いてないから、描いてみたいって気持ちになってきた!
押切 自分じゃない人間を動かすから、難しいけどね。このキャラは次どう動くんだろう? って悩むのすごい嫌だし。でもそれ以上に読者が喜んでくれるんですよ。
ニコ キャラが勝手に動いてくれるとか、そういうのって本当にあるんです?
押切 まあ勝手には動いてくれるけど、土俵を作るのはこっちだから。自分の好きなことを漫画にすると、絶対面白くなるよ。読者って自分がゲーム好きじゃなくても、作者はゲーム好きなんだなっていうのが伝われば、面白く読んでくれるからね。ニコさんも、好きなこととかないの?
ニコ 隙間なく漫画の仕事入れちゃってるからなあ。いや、仕事がなくなると不安だから「できます!」って言っちゃってるだけかなぁ……。でも結局、漫画が好きってことなのかもなぁ。
押切 ニコさん、そんな漫画好きに見えないんだけど。『ベルセルク』とか『アイアムアヒーロー』とか読んでる?
ニコ 読んでるさ、全巻読んでるさ!
押切 僕の本も?
ニコ まあ一部は。
押切 あはは!!
ニコ 『HaHa』が好きです。素直にお母さんは大事にせんといかんなって思った。
押切 ニコ先生は人間力がありますね。
ニコ いいこと言ってくれますねえ。
押切 魅力ある人間だからこそ漫画が描けるんですよ。漫画家でつまんない人、あまり見たことないでしょ。
ニコ いないですね。漫画家さんにインタビューしてると子供時代から今に至るまで、どの話も面白すぎていつの間にやら4、5時間経ってたり……。
押切 僕のこともうんこに描いてくれましたなあ。低姿勢なわりにはバカにしてる感じが漫画から滲み出てるんですよ。
ニコ バカにしてないですよ! どっかで負けたくないっていう対抗心があるのかも。
押切 そりゃそうだよ。いつかぶっ潰そうという気持ちもあるわけでしょう。でもそれが普通だと思うんです。
(猫を肩に乗せた人が登場)
押切 (猫を目で追いながら)……いやあ動物自慢の公園だな!
ニコ 意識を猫にもっていかれるなよ!
押切 ごめんごめん。僕も実は『でんぐばんぐ』みたいな感じで、田舎コンプレックスをテーマにしたいなと思ってるんですよ。東京にあこがれをもってる人たちの話を描きたいなあって。コンプレックスはものすごい力になると思うし。あなた、コンプレックスの塊でしょ?
ニコ そうですね。それがあるからこそマンガ描いてられるのかな。
押切 そうだよ。だからこそ、信念があって血が通ってる、魂を持ったキャラクターを考えないと。
ニコ 無理にいい話にしようとしなくていいんだよ? 『マンガ道場破り』の時の押切さんは「自分より下手なやつを見て元気を出せ!」ってゲスなこと言ってたじゃん。
押切 そんなことも言ったような……。
ニコ 上手い人ばっか見てると、どんどん自分が落ちてゆく……。
押切 そうだね。(下巻のゲラを読みつつ)下巻の表紙では、勇気を出して自分のことをちょっと可愛く描いたでしょ? 時々すごいブスに描いてる時もあるから、そういう卑屈なのはもうやめよう。楽だし、照れ隠しになるかもしれないけど。
ニコ 自分が卑屈なのに?
押切 そうかもしれないけど、ニコさんの醜いところはあまり出さないほうがいいですよ。動かしやすくていいかもしれないけど、読者も気を使っちゃう。ただまあ……これがニコさんの持ち味と魅力だからいいんだよなあ……。
ニコ う~ん。とはいえ、たしかにこういう卑屈キャラを描くのはしばらくいいかなって思いますわい。
(ここでプレーリードックが登場)
押切 ……あれ何? 立ってる!
ニコ 下巻のゲラ見なさいよ……。プレーリードックを見るんじゃないよ…… 。
押切 しょうがないじゃん。かわいいもん。動物にはかないませんよ……。ってことで、『でんぐばんぐ』下巻をよろしくお願いします。
ニコ プレーリードッグは出ませんがハクビシンは出る『でんぐばんぐ』を何卒よろしくお願いします。
(リコーダーを吹くおじさんが女子高生に話しかけている)
(プレーリードックは走り回る)
(ひとりでけん玉を振り回している人もいる)
ニコ・ニコルソンNico Nicholson
宮城県亘理郡山元町出身のマンガ家/イラストレーター。
宮城県の専門学校卒業後、「東京で就職が決まった」とうそをついて上京し、2008年に『上京さん』(ソニー・マガジンズ)でデビュー。著書に『ニコ・ニコルソンの漫画道場破り』(白泉社)、『ニコニコ妖画』(講談社)、『ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画』(エムオン)などがある。2013年3月11日発売の『ナガサレール イエタテール』(太田出版)は、東日本大震災で津波被害を受けた実家を再建するまでを描き、16回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品に選ばれた。2017年3月発売の新刊『婆ボケはじめ、犬を飼う』(ぶんか社)、は、再建した家に新しい家族「ヌ太郎」を迎えたニコ家を描いた、注目の描き下ろしエッセイ。
押切蓮介OSHIKIRI RENSUKE
ホラーギャグマンガ家として『ヤングマガジン』誌でデビュー。以降、本格ホラーから叙情派青春ストーリー、4コマまで、つねにテンション高い作品を発表しつづける。『ピコピコ少年』シリーズの他、著作に『でろでろ』 『ハイスコアガール』 『ドヒー!おばけが僕をぺんぺん殴る!』 『おばけのおやつ』 『ゆうやみ特攻隊』 『サユリ』 『焔の眼』など。
Ohta Web Comicにて『ピコピコ少年EX』を連載中。