植本一子『家族最後の日

母との絶縁、義弟の自殺、
夫の癌――
写真家・植本一子が生きた、
懸命な日常の記録。

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『家族最後の日』
植本一子

搬入発売: 2017年1月31日
仕様: 四六判上製
価格: 1,870円(本体1,700円+税)
ISBN: 978-4-7783-1555-9
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本書への反響

(五十音順、敬称略)

  • 嫌悪していても、心が寄りそう瞬間があり、
    死のうとしていても、生きようとした痕跡があり、
    知りたいと思いながら、知りたくないと考えている。

    植本さんの言葉は、読む自分を両極に揺さぶる。
    揺さぶられ揺さぶられて、濾過されたあとに残るものは何だろう。

    現実とフィクションの違いは、絶望に続きがあることだ。

    「最後の日」のあとにもそ知らぬ顔で明日は来る。
    最後の日からはじまる家族のことを想像するとき、
    そこに光が見えるような気がする。
    光を見たい。
    光が見えると思いたい。
    そのために祈る。
    祈りの言葉もスタイルも関係なく、ただ光のためにいまも祈っている。

    大塚真祐子(三省堂書店神保町本店2階)

  • 植本一子の写真が好きだ。全身で世界に体当たりして、被写体となるその人をまるごと受け止めているような、生を肯定しているような写真。
    彼女の文章も写真とよく似ていると思う。どんなのっぴきならない現実も、目をつぶらないで対峙して、文字で刻みこんでいく。

    それが“生きているという証拠”だと言う。

    人を幸せにできるのも、傷つけることができるのも、結局人なんだな、という当たり前の事実に改めて気づかされる。そして彼女は、人と人との現在進行形の関係を、何よりも尊いものとして受け止めているのだろう。様々な感情を吐露しながら、その関係をきれいごとにするのを決して許さない。それは、とんでもなく凄いことで、それこそが愛と呼ぶべきものではないかと思う。

    黒田義隆(ON READING)

  • ずっと同じ日常が続く事はない。
    植本さんの実家、石田さんの実家、そして夫と子供たちとの家族。
    家族最後の日の始まりは拍子抜けする程に突然始まる。
    “生きる”という言葉が炙り出される、鮮明で体温に満ちた家族の物語。

    酒井裕介(スタンダードブックストア心斎橋)

  • こんなに揺さぶられた読書ははじめてかもしれない。深夜2時にあとがきを読み終え、興奮して寝付けなくなってしまった。それならばもう一度読み直そうかと思ったけれど、この収まりのつかない気持ちが薄れてしまう気がして、それはとてももったいないことのように思えた。あらゆる感情が動き、なんだかとても疲れた。これは危険な本だ。

    一子さんの文章を読むと、普段は蓋をしている感情が言葉となって、堰を切ったように頭の中にあふれ出す。きっと、ずっとわたしも誰かにこうして伝えたかった。ここに描かれている煩わしさは、悲しみは、モヤモヤは、いつかのわたしのものでもある。一子さんはそれらを無視せずに全部すくいあげて、肯定してくれた。言葉にするということは、存在を認めて価値を与えることなのかもしれない。
    いつまでも出来た人間になれない面倒な自分のことも、受け入れたいと思える。四苦八苦しながら毎日を必死に生きていくことは、それだけでとても尊いのだ。 この本はわたしにとって、何よりの励ましであり、救いである。

    わたしには書店員という自覚があまりない。本に詳しいと思われるのもプレッシャーだし、書店員という肩書へのハードルはちょっと高い。でも、この本を誰かに届けるきっかけになれるのだと思うと、書店員であることはとても幸せなことだとはじめて心から思った。

    佐藤友理(BOOK MARUTE)

  • 自分の心のうちを丁寧に丁寧に写し取っていくような文章だと感じました。
    彼女の身に起きた出来事は彼女だけのもので、もちろん誰かと共有できることではありませんが、日々の生活を必死に生きている人には自分のことのように思えてくる作品ではないでしょうか。

    佐々木貴江(TSUTAYA TOKYO ROPPONGI)

  • どんなに苦しいことがあっても、「どうやったって日常は続く」。
    自分自身もウンザリする様な現実に打ちのめされそうになるなかで、
    植本さんを勝手に、共に戦う同志の様に感じてしまいました。

    佐貫聡美(紀伊國屋書店和書販売促進部仕入課)

  • オススメはありますか? と聞かれたとき、『かなわない』を挙げていた。
    しばらくすると興奮した様子で「共感した」「一気読みした」という反応を聞いた。
    一方で「数日間寝込んだ」「途中で読めなくなった」といった声も聞いた。
    少し恨めしそうな顔をして。

    家族最後の日は突然やってくる。
    広島の母の愛と憎しみ。吉祥寺の義弟の未来への失望。そして夫ECDの 癌との闘い。
    壮絶と口にしても収まりきらない出来事がたった一年のあいだに起こるなんて。
    それでも、傷つきながらも前を向こうとする植本さんの生身の喜びと悲しみに
    読んでいるこちらも自分に対してごまかしが効かなくなる。自分と向き合わされる。

    彼女の日常は決して他人事のような感覚で傍観することはできない。
    地続きの現実で彼女の物語を共に生きている。

    清政光博(READAN DEAT)

  • 世の中には「家族」を描いた小説、ドラマ、映画がたくさんある。
    『家族最後の日』は私が今まで触れた家族の物語の中で、最も切実に人が生きている日常が描かれていた。

    読んでいて、時々つらい気持ちになったり、少しほっとしたりした。
    日記ってそういうものだとはわかっているけど、知り合いでも友達でもない私がこんな個人的なものを読んでいいのかと思ったりもした。
    一人の人間が家族、友人と生きていて、本当にいろんなことが毎日起きて、それでも生きている。
    そんな当たり前に思える、決して当たり前ではないことがこの日記の中にはあって、それが本書の優しさと強さなのだと思う。

    辻香月(大垣書店イオンモールKYOTO店)

  • 早いけど2017年のベスト本がもう決まってしまった。
    本全部がまるごと魂の叫びみたいで、こんなに正確に文章で叫びを再現できることがすごい。
    TVで観たどんな家族ドラマをも軽々と飛び越える、切実な家族の物語だった。

    花田菜々子(パン屋の本屋)

  • しんどいことがあったときにネガティブな感情を書き付ける専用のメモ帳を携えている。
    文字列になったソレはどこか他人事のようになり重宝をしている。
    不慮があってこの世にそのメモ帳が自分不在で残り、近しい人つまり家族に渡ったら心苦しい。
    植本さんが書くものがそれに似ていると言いたいわけではない。
    ただ植本さんはそのメモ帳を面白がりそうな予感を勝手に持った。
    「生きているといろんなことがある」だなんて心底実感している時間は愚かしい。
    明日も二億年先も一秒後も衝突せんばかりに現在に向かってくる。
    植本さんの身に「いろんなこと」が起きていることは確かでしょう。
    そしてその「いろんなこと」を読者は無造作に突きつけられる。
    とりもなおさず自分にも「いろんなこと」が起こりうることをまざまざと見せつけられる。
    「読者との共犯関係」というのは書評などで散見される表現だが『家族最後の日』が出色なのは徹底的に植本一子の単独犯である点かもしれない。
    読者は巻き込まれるでもなく、身につまされるでもなく、いかんともしがたい感情が一人一人の裡にあることを確認するのではないだろうか。

    石田さんの病室の窓外に虹を見たえんちゃんが「てんごくへのかいだんだよ!」と言い植本さんが笑う。
    「かなしくなったらグッドして」
    これが現代の福音。

    花本武(ブックスルーエ)

  • いることが当たり前の人がいなくなった時に相手の大事さがよくわかる。
    失ってしまってから大事だったことに気づく前にもっと家族と向き合うべきではないか、面倒な相手にもきちんと向き合うべきではないか! と家族についてとても考えさせられた1冊です。

    星由妃(株式会社ゲオ 商品開発課)

  • 私も植本さんと同じ子育て中の身なので、前作『かなわない』は非常に心苦しく、
    読んでいて辛くなることの方が多かったのですが、
    今作は周りの状況こそ壮絶なものの、植本さん自身の指針が前作の頃より定まっている気がしてその部分では前作より前向きな気持ちで読めました。
    特に、10月11日の日記で「この子たちがいてくれてよかった」と言っていたのが、かなり心に刺さりました。
    救われた気がしました。

    植本さんは、普通だったら隠しがちな育児の苛立ちや収入・支出の話などを余すことなく晒していて、そういった面では少し羨ましさも感じます。
    誰に見られることも気にせず吐き出して、それを生きる糧にしているような姿勢はとてもかっこいいです。

    宮澤紗恵子(紀伊國屋書店ららぽーと豊洲店)

  • 母親との絶縁、義弟の自殺、夫の癌告知……。
    それらの日々が綴られていて、しんどい日の文章はしんどいし気分のいい日は晴れ間が覗いたようにふわーってこちらも嬉しくなる。
    今後何度も読みかえすだろう大切な一冊。

    村上元康(くまざわ書店蒲田店)

  • 一子さんの文章は、読んでいて、とても「ヒリヒリ」します。
    余計な飾りがない分、人間の弱いところやダメだと感じられるようなことも、隠れることがないまま書かれた文章のこの「ヒリヒリ」は、私自身のズルイ部分の表れなのかもしれないと思うとやるせない。
    でも、言葉の懸命さは切実で、そして、わたしの一部でもあることにおののくのです。

    幸恵子(HMV&BOOKS TOKYO)

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著者プロフィール

植本一子(うえもといちこ)

1984年広島県生まれ。
2003年にキヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞、写真家としてのキャリアをスタートさせる。
広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活躍中。
著書に『かなわない』(タバブックス)、『働けECD――わたしの育児混沌記』(ミュージック・マガジン)がある。
ホームページ:http://ichikouemoto.com/