2015年5月17日、川崎の簡易宿泊所で火災が起き、11名の方が亡くなりました。火災跡地は高層マンションに囲まれたところに、ひっそりとありました。高齢であることを理由にアパートへの入居を断られた生活保護受給者が多数住んでいたそうです。(写真1、2)
その後、釜ヶ崎山谷とならんで三大寄場といわれる横浜寿町へ取材。寿支援者交流会の高沢幸男さんによれば、簡易宿泊所の老朽化が進み、建て替えが進んでいるそうです。きれいな外壁、エントランスを見るかぎり、普通のワンルームマンションと変わりません。(写真3)
マンションよりも簡易宿泊所のほうが、収益があがるのだそうです。かつて日雇い労働者だった街も、行き場のない老人の街に変貌しています。
横浜の中華街のすぐそばにこの街があったことを、私は恥ずかしながら知りませんでした。
(「第五章 貧困の時代とバケツの蓋」に収録)
著者からのコメント
4週間も日本に滞在したのは、20年前に英国に渡って以来、初めての経験でした。
わたしは頻繁に母国に帰るタイプの人間ではなく、8年間まったく足を踏み入れなかった時期もあります。そんな人間が20年ぶりに1カ月も日本で過ごすことになり、そこで得た最大の収穫は、草の根の活動家たちとの出会いでした。母国ではリベラルや左派の建て直しの必要性が盛んに語られているようです。そんないまだからこそ、例えば本書に出てくる山谷の「あうん」の中村光男さんの言葉をぜひ読んで欲しい。
知るべき人びと、ほんとうにクールな人びとは、ネットの喧騒の外側にいます。
そして彼らは、英国を地べたから支える屋台骨であるグラスルーツの活動家たちによく似ていたのです。
「THIS IS JAPAN」著者 ブレイディみかこ
1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。 著書に『花の命はノー・フューチャー』(碧天舎)、ele-king連載中の同名コラムから生まれた『アナキズム・イン・ザ・UK ――壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(Pヴァイン)、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(Pヴァイン)、『ヨーロッパ・コーリング――地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)がある。
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