全収録作品解説
文=足立守正
text by Morimasa Adachi
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#001-002
パンティストッキングのような空皮肉屋だけど侠気のある三上くんと、ピュアで力持ちのひろしくん。
この仲良しコンビに、いじめられっ子のアイちゃんが加わり、
世の不条理にささやかに挑むが、溜め息は白い呼気とともに冬空へ立ちのぼる。
不細工で切ない、古びることのない青春スラップスティック。(2003年ヤングジャンプ27・28号掲載)
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#003
平成の大飢饉予告編惜しくも終わらなかった世界。
今や立派にビデオ店員のバイトとして自活するひろしくん。
彼の結婚騒動に三上くんが乱入、
国粋主義者の組織も巻き込んでのスレスレなドタバタの巻。
果たしてひろしくんは結婚できるのか?
そして今度こそ世界は終わるのか?(『パンティストッキングのような空の下』のための描きおろし)
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特別インタビュー
不世出の天才漫画家、
うめざわしゅん復活
『パンティストッキングのような空の下』
に見えた漫画表現の到達点
文=足立守正
text by Morimasa Adachi
うめざわしゅん。
ストーリーも画力も優れた実力派作家で、
現在3冊のコミックスが流通している、
しかし、情報はほぼそれだけ。
メジャーなキャリアの割に寡作で謎の多い作家だ。
そのうめざわしゅんの、単行本未収録作をまとめた
『パンティストッキングのような空の下』が刊行。
三上寛の楽曲のタイトルを戴いた、
作者の集大成といえる傑作短編集だ。
こんな作品が、今まで置き去りにされていたとは。
勉強不足だった。
もちろん、貴方たちもです。
特別対談
末井昭×うめざわしゅん
「だから僕は、つけめんを食べるまでは自殺はしませんね(笑)」
文=井口啓子
text by Keiko Iguchi
写真=奥山智明
photo by ToMoaki Okuyama
公開=2016.2.19
他人とうまく喋れる人なら、
そもそもこんな漫画描かないよね、と頷きつつ。
担当編集者も「口数が少ない」と太鼓判を押す、
うめざわしゅんの対談って大丈夫? という不安は、
相手が末井昭と聞いて、
むしろ期待と興奮へと変わった。
漫画とエッセイと表現こそ異なるが、
共に不条理に満ちた世界でもがく人々を鋭くやさしい眼差しで描く二人。
作品集『パンティストッキングのような空の下』にはじまり、自意識、自殺、聖書……と、底なしにダークで、だからこそ核心に迫る対話を、
すべての唯一者たちに捧ぐ。
本書へのコメント
今回初めて読みました。
うめざわさんの痛々しいほどの鋭敏さが伝わってきました。
Aも否定、Bも否定、Cも否定……と自分をギリギリ追い込んでいって、
針の穴ほどの出口を希求する……という感じでしょうか。
時代に対するアクチュアリティも常に高いですね。
大変かもしれないけれど、今後も充実した作品を書き続けて欲しいと思います。
会田 誠(美術家)
うめざわさんの漫画は思わず仰け反ってしまうほどの直球だ。
誰もが目を背けたいアレやコレを執拗に突きつけてくる。
過激、しかし真摯。
それでいて(だからこそ)面白い。
浅野いにお(漫画家)
智も情も意地もなきよなこのご時勢
「とかくに人の世は住みにくい」と言わずにおれず まわり道
目指せ 一億総堕落 それでも咲いた花一輪
うめざわしゅん ここにあり!!
新井英樹(漫画家)
みんなも、うめざわ作品を読んで
滅多刺しにされればいいんだ!
諫山 創(漫画家『進撃の巨人』)
僕は漫画や音楽や、その他いろいろいろいろから勇気をもらって生きてきた。
絶望と希望、どちらもあって、
どちらかだけでなく丸ごと抱えて生きてゆくような。
うめざわさんの漫画もそういう人生のよき一冊になる気がします。
カンパニー松尾(AV監督)
いろんな「あたしに任せて」が潜んでいる。
変わろうとして身悶える人間の姿は、なんて無様で心を揺すぶるのだろう。
こだま(文筆家)
漫画を超えた漫画。余韻残りっ放し。
末井昭(編集者、エッセイスト)
うめざわしゅんのマンガを読んでいる間中、ずっと胸の中がざわざわしていた。
それはいったい何なのか、と思って、しばらく考えていたが、
どうやら「感動」というものらしいと気づいた。なんてこったい。
こんなものに、こんなものに感動するなんて。
それから、もう一つ別のことが頭に浮かんだ。
ほんとうにすごいものは必ず誰かが見つけ出してくれるんじゃないか、ってことだ。
誰だか知らないけど、うめざわしゅんを見つけてくれて、読ませてくれてありがとう。
この世の中、まんざら捨てたもんじゃないよな。
高橋源一郎(作家)
いっきに読み終わったあと、なぜが不安な気持ちになりました(笑)
俺が社会に感じている感覚とはまたぜんぜん違う、恐らく
一般的な日本人が抱えているであろう不安感
の様なものがひしひしと伝わってきました。
DyyPRIDE(ラッパー、SimiLab)
十数年の時を経て、諦観に満ち満ちてゆくこの時代に
再び紡がれ&発射されたミサイルのような漫画。
心に焼け野原が出来た。
手と足にぎゅっと力が入った。
直井卓俊(企画・配給プロデューサー)
ネガティヴと見まがう漫画である。だが、虚無感はありそうでない。
それは作者の「とにかく読んで欲しい」という気持ちが弾けているからだ。
ひとりでも作者の意にこたえ、
多くの人達に読んでもらいたい 作品集である。
根本 敬(特殊漫画家)
もがくほど変わろうとしない世界。
人間本来の力強さを感じるオープニングから、
自分自身を再定義して新世界へと踏み出そうとする圧巻のフィナーレまで、
心に刺さりまくる素晴らしい作品でした。
はみ出し者たちのジュブナイルはたくさんあるけれど、
漫画表現の枠組みを忘れてしまうほど鮮烈
でした。
橋野桂(『ペルソナ』シリーズディレクター)
まぎれもなく大傑作でした。
人の痛みに寄り添う筆致で、
光に当たらないような人生を
美化せずに愛を持って描く。
ここには本当の優しさがあると思います。
松居大悟(映画監督)
わたしはバカですが、
先生の描く愛くるしいバカな人間が、
バカみたいに好きです。
やまもとありさ(漫画家)
そんな女の子は絶対にいない、んだけど、
「いたら?」と考えてみると、
想像もしなかった日常の真実に気づく!
吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)