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百田尚樹

百田尚樹(ひゃくた・なおき)
1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。人気番組『探偵!ナイトスクープ』など放送作家として活躍。2006年『永遠の0に』(太田出版)で作家デビュー。『聖夜の贈り物』『ボックス!』(いずれも太田出版)、『風の中のマリア』(講談社)、『モンスター』(幻冬舎)など多彩な執筆活動を展開し読者の熱い支持を集めた。いま最も期待される作家である。最新刊は『リング』(PHP研究所)。

松田哲夫

松田哲夫(まつだ・てつお)
1947年、東京生まれ。1970年、東京都立大学を中退し筑摩書房に入社。数多くのヒット作を手がけた後、現在は顧問を務める。著書に『これを読まずして、編集を語ることなかれ。』(径書房)、『印刷に恋して』(晶文社)、『「王様のブランチ」のブックガイド 200』(小学館101新書)など。

INTERVIEW

EXTRA INTERVIEW

2010/06/11 00:00 INTERVIEW

聞き手:松田哲夫 写真:辺見真也

延長戦
奥深きボクシングの世界
そして『ボックス!』

松田
『ボックス!』の単行本が出て
いろいろ話題になりましたけど、
読者からの反響で嬉しかったこと、
あるいは新しい発見などありましたか?
百田
昔は読者の感想っていうのは、
なかなか著者に届かなかったんですけど、
いまはブログとかもありますから、
結構簡単に届きますよね。
松田
いろいろ好き勝手なことも
書いてありますけど(笑)。
百田
時々ムカッと来ることもありますけどね(笑)。
でも、有難いことに『ボックス!』に関しては、
概ね「面白かった」と言っていただきました。
いただいた意見の中で言うと、やっぱり男性からは
「血湧き肉躍った」という意見がたくさんあって、
それはそれで嬉しいんですけど、それとは別の嬉しさで、
先ほど耀子先生の話をしましたけど
「私は、これまでボクシングって見なかった。
むしろ嫌いやったけど、この本で夢中になりました」
という女性の感想をブログで拾えたんですね。
それも嬉しかったです。
「ああ、良かったなあ」と。
もともと男には闘争本能がありますから、
『ボックス!』のような作品は好きなんですけど、
ホントにそういった格闘技に縁がない、
むしろ敬遠していたような女性が「ボクシングが
こんなに魅力あるスポーツだとは知らなかった」
とおっしゃっていただいたのは嬉しいですね。
松田
『ボックス!』を読んで、
アマチュアボクシングの試合を見に行こうと思った人も
随分いるんじゃないですかね。
百田
そうだったら嬉しいですね。
松田
ボクシングの普及にも、
大きな貢献を果たした作品ではないかなと(笑)。
百田
アマチュアボクシングは、
やっぱり競技人口が年々減ってるんですよ。
松田
やっぱり、危険だとか?
百田
そうですね。
過酷なスポーツですから。
ボクシングは他のスポーツと比べても
"負け"が10倍堪えるんですよ。
相手に打ちのめされての負け、ですから。
松田
相対評価じゃないわけですからね。
一番の絶対評価ですよね。
百田
しかも、自分の肉体にダメージを喰らって。
いろいろ聞いていると、
九州なんかの選手は非常に強くて、
ボクシングも盛んらしいですね。
松田
熱い血がたぎるっていうのがあるんですかね?
百田
そうですね。
だからインターハイ予選でも、
他の地方に比べて圧倒的に選手数が多いですから、
決勝までに何日もかかるらしいです。
沖縄も強いらしいですよ。
松田
僕ら読者からすると、せっかくボクシングの
面白い世界を教えてくれたわけですから、
『ボックス!』の続編とは言わないにしても、
また違うタイプのボクシング小説を
百田さんに書いてもらえたら、という気もするんですけど。
いまのところ、そういった気持ちはありませんか?
百田
『永遠の0』もそうやったんですけど、
書いてるうちに「これでもうひとつ作品ができるなあ」
っていうようなエピソードとか、
そういうのは思いつくんですけど
......ケチくさいことはやめようと(笑)。
松田
(笑)。
二番煎じとか、柳の下のドジョウは狙わない
というのは潔いですね。
百田
とにかく書きたいことは全部ブチ込もうっていう
タイプなんですよね。
松田
だから、毎回違いますよね(笑)。
スズメバチになったり(『風の中のマリア』)、
時代小説を書いたり(『影法師』)。
百田
書きたいものは後に残さないで、「これをこうすれば、
もう一作品できるな」っていうものも
「全部詰め込んで、たっぷりフルコースで見せよう」
と思ってしまうんですね。
松田
遅咲きの作家として、
焦ってる面もあるんじゃないですか?(笑)。
百田
(笑)。
僕が、あと30年も40年も書いていかなあかんかったら
「これは置いといて......」ってやるんでしょうけど。
でも、そんなに長くは作家もでけへんやろうから
「いま書きたいものは、全部いまの作品に入れてしまおう」
と思うんですね。
ただ、ボクシングにしても1作で全部を
書き切れるものではなくて、もっともっと深い世界ですから、
そのうち気が乗ったら、またボクシングを書いてみようかな
とは思ってるんですけどね)。(おわり)
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