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百田尚樹

百田尚樹(ひゃくた・なおき)
1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。人気番組『探偵!ナイトスクープ』など放送作家として活躍。2006年『永遠の0に』(太田出版)で作家デビュー。『聖夜の贈り物』『ボックス!』(いずれも太田出版)、『風の中のマリア』(講談社)、『モンスター』(幻冬舎)など多彩な執筆活動を展開し読者の熱い支持を集めた。いま最も期待される作家である。最新刊は『リング』(PHP研究所)。

松田哲夫

松田哲夫(まつだ・てつお)
1947年、東京生まれ。1970年、東京都立大学を中退し筑摩書房に入社。数多くのヒット作を手がけた後、現在は顧問を務める。著書に『これを読まずして、編集を語ることなかれ。』(径書房)、『印刷に恋して』(晶文社)、『「王様のブランチ」のブックガイド 200』(小学館101新書)など。

INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW 08

2010/05/07 19:00 INTERVIEW

聞き手:松田哲夫 写真:辺見真也

第8回
人生は長い闘い

松田
『ボックス!』もそうですけど、
百田さんの作品には"闘う物語"が多いですね。
百田
自分では気がつかなかったんですけど、
それについては、いろんな人から指摘されます。
『永遠の0』も飛行機の闘いやし、『ボックス!』も闘い、
あとスズメバチもずっと闘い続けますから。
だから、それを人に言われて
「ああ、ホントやなあ」と思って。
だから結構、闘うということが
好きなのかもしれませんね、自分の中では。
松田
一番物語が構築しやすいっていう面もあるんですかね。
百田
そうですね。
あえてキザな言い方すると、
やっぱり人生は一種の長い闘いであって、
目の前の敵、困難にぶつかっていくのが人生だと
思っているところがありますから、
そういう思いが先に出ているのかもしれませんね。
『影法師』にしても、闘いのシーンがすごく多くて。
松田
読者も、そのほうが楽しいっていうのはありますよね。
百田
3月に幻冬舎から新刊を出したんですけど(『モンスター』)、
それはブサイクな女性が美しくなるために
闘っていく話なんです(笑)。
松田
だから、離れたところから見ていると
「この作家は同じ人なんだろうか?」
って思われちゃいますよね(笑)。
百田
自分でも、ときどき「僕のホームタウンは
どこにあるのかな?」って思うときがありますよ(笑)。
松田
100年後に誰かが調べると「百田尚樹は同じ名前だけど、
いろんな作家が描き分けてる"合同ペンネーム"じゃないか?」
って言われそうですね。
百田
(笑)。だから自分でも不思議なくらい、
どれも作品が違うなあと思いますね。
松田
でも、百田さんは純粋に小説だけを書く作家にはならず、
やっぱり放送作家も続けていきたいわけですよね?
百田
もちろん専業作家になってもいいという気持ちはあって、
だいぶシフトしつつはあるんですけど、
『探偵!ナイトスクープ』だけは
スタートから20年やっている番組で私がチーフですから、
この番組が終わるまでは頑張ろうと思ってるんです。
この番組が終わったら、放送作家を引退しようかなと思って。
ただ、もう、そんなに多くの時間を
取られるわけではないんですけどね。
松田
前線の実戦部隊というよりは、司令部みたいな感じでしょうか?
百田
そうですね。
取材というよりも会議でアイディアを出すことが主なんですけど、
現場のディレクターは私より10歳20歳年下ですから、
よく相談は受けます。
そういうときには、ディレクターと「ああして」「こうして」
というアイディア出しをしますね。
松田
『風の中のマリア』のスズメバチは
『ナイトスクープ』の取材が生きた例でしょうか?
百田
いや、あれは、また違う番組やったんですよ。
別の番組で1回スズメバチの巣を捕る職人さんを取材したとき、
いろいろスズメバチを研究して
「ああ、これは面白いな」と思ったんです。
そのときは小説と縁のない世界にいたんで
「いずれスズメバチのちゃんとしたドキュメンタリーを撮りたいな」
とは思ってたんですけど、そういった機会もないまま
小説家になって「ああ、ドキュメンタリーで撮れなかったやつを
小説にしてやろう」と。
松田
そういう意味では『ナイトスクープ』を含めて、
放送作家としての30何年の引き出しというのは
豊富にあるんじゃないですか?
百田
はい、有難いことに何百本っていう番組を作ってきましたから。
松田
『ボックス!』や『永遠の0』にしても、
ボクシングやゼロ戦ということではなく、
普通のシーンや風景を書くときに
放送作家の経験が生きてくる部分もありませんか?
百田
自分では、よくわからないんですよ。
ただ、ストーリー展開に関して悩んだり苦しんだりしたことは、
まだないですね。(その9に続く)
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