スペシャル
ニコルソンの実家は、宮城県の山元町。東日本大震災のあの日、この町は未曾有の大津波に襲われました。「ぽこぽこ」にて実家再建エッセイを連載中のニコさんに、山元町のことやニコ家のことを伺ってきました。山元町の取材レポートと一緒にどうぞ。
母ルソンと婆ルソン
- ▼山元町レポート
- 第1話で描かれたとおり、1階は津波に呑まれました。天井近くに、水が来た痕跡が残っています。天井にも何かがぶつかった跡がありました。
- ニコ家の2階からの景色。流されてきた船がぽつんと残っています。画面右手の地面が白っぽくなっている部分には家があったとのこと。壊れず残った家は大工さんが造った家が多いということでした。
- ニコさんが小学生時代に描いたマンガは、2階にあったので無事残っていました。「これをボランティアさんが見たと思うと……」と、ニコさんは無念そう。
―――母ルソンさんと婆ルソンさん、先日の取材でお会いしましたが、とても素敵な方ですよね。このマンガの重要な登場人物なので、紹介をお願いします。
ニコ 母ルソンは、淡々として、動じない。でも、私が思っているより動揺してるんですよね、顔には出ないんだけど。今回、それが分かりました。溺れている婆ルソンを助けるほどの火事場の馬鹿力を発揮して、あの地震と津波を生き抜いたっていうのは、我が母ながら、よくぞと思います。敬礼!
―――印象的な母ルソンエピソードはありますか?
ニコ 私が1才の時、父親と別れてるんです。何かの時に父親のことを、「おまえの種がね」って言った時に、この人が分かった気がしました。私、ほとんど父親のことを知らなくて。本当に最近知ったんですよ。先週……先々週かな? 新幹線で川崎から仙台に戻る途中で、「実は、おまえの父親は○○○○(あまりの衝撃のため伏せ字)」って言われて。
―――えええええーー!!
ニコ そういうのを今頃言ってくる(詳細は今後の『ナガサレール イエタテール』を楽しみにお待ちください)。萩尾望都先生好きで、B型の変わり者ですよ。自分のこと、私に名前で呼ばせてました。お母さんとかママって呼ばれるのが嫌だからって。私もずっと「コロ君」って呼ばれてるんですよ。赤ちゃんの時にコロコロしてたからって理由で。
―――すごく面白い方ですね。では、婆ルソンさんはどんな人ですか?
ニコ プチ痴呆になってから、どんどん子どものようになっていきますね。庭いじりが趣味だったんですが、たまに仮設住宅から家のある場所に戻ると、今はなんにもないんだけど土をほじくってる。それを母ルソンが見て、「ここがともちゃん(婆ルソン)の保育所だ」って。子どものようで可愛いです。甘いものをあげると、「おなかいっぱいだよー」って言いながら食べるし(笑)。
〈プロフィール〉
- ニコ・ニコルソン
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宮城県亘理郡山元町出身のマンガ家/イラストレーター。
宮城県の専門学校卒業後、「東京で就職が決まった」とうそをついて上京し、2008年に『上京さん』(ソニー・マガジンズ)でデビュー。著書に『ニコ・ニコルソンの漫画道場破り』(白泉社)、『ニコニコ妖画』(講談社)、『ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画』(エムオン)などがある。2013年3月11日発売の『ナガサレール イエタテール』(太田出版)は、東日本大震災で津波被害を受けた実家を再建するまでを描き、16回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品に選ばれた。2017年3月発売の新刊『婆ボケはじめ、犬を飼う』(ぶんか社)、は、再建した家に新しい家族「ヌ太郎」を迎えたニコ家を描いた、注目の描き下ろしエッセイ。