太田出版ニュース
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太田エロティック・マンガ賞にご応募いただきありがとうございました。今回は佳作に1タイトル選出となりました。あらすじと講評をここに公開いたします。
【2018年上半期】太田エロティック・マンガ賞
審査員:山本直樹、本誌編集部
賞金:大賞 40万円、入選 20万円、佳作 10万円、奨励賞 3万円
最新のマンガ賞については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内します。
佳作 賞金10万円
- 藤井夏子
「とおぼえ」 - 36p
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【あらすじ】
同級生の尾野が死んでしばらくして、学校に来なくなった新田。並木は島崎とともに新田の家に行くことにする。家の近くの沼で人を見たという新田の言葉を聞いた並木は――。 - 作品を読む(期間限定公開)
※掲載にあたり、応募時から一部修正を作者により行っています。
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- 山本直樹 講評
ふたりの男子キャラクター(並木と島崎)の顔の描き分けができていない。こういう描き分けは、どちらかにメガネをかけさせたり、どちらかの髪を長くしたりするだけでいいんです。ストーリーも飛んでいるところがあり、2、3回戻って読みましたが、シーンの前後のつながりがわかりませんでした。でも、それ以外はすごくいい。めちゃくちゃうまい絵ではないのですが、「手が冷たいのはペットボトルをもっていたから」とか、ディテールの描写が上手なんですね。扉もよかったです。扉がいいと読む前から「いい感じ」というのが伝わってくるんです。
キャラクターの描き分けやストーリーの展開に欠陥があるんだけど、それを上回る雰囲気や世界観がありました。読んでいて「こういうものを描きます」という作者本人の気持ちを感じました。これからも描き続けて欲しいです。
総評
今回は佳作が出ました。全体的に話がまとまっている作品が多かったのですが、まとまっているということは、“すでにあるスタイル”をなぞっているということでもある。読みやすいんだけど、そこからはみ出るものがないと、読んでいて引っかからない。世相を反映してか貧困問題を扱った作品が複数ありましたが、いずれも"理屈"が先走っていたように思います。
佳作を受賞した藤井さんの「とおぼえ」は、応募作のなかで一番欠陥の多い作品だったかもしれない。ストーリーもそこまで起伏があるわけじゃない。にもかかわらず、この作品がよいと思えるのは、この主人公の女の子に惹かれてしまうからなんですよね。
これは応募作全体に言えることですが、「このキャラクターにまた会いたい」と思わせることが大事です。読者に自分が作ったキャラクターを本気で好きになってもらう。藤井さんの作品は、読了後も「この後、この女の子はどうなったのかな」と思わせる、キャラクターの“息遣い”を感じる作品でした。
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