スペシャル
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取材・構成=門倉紫麻
40代女子が直面する切実な問題に、連載中からたくさんの共感の声が届いていた、雁須磨子によるマンガ『あした死ぬには、』。愛読者であり、多子や塔子と同世代である40代女子3名に集まってもらい、思うまま語り合う座談会を開催。後編では、違う状況にいる女友だちとの付き合い方について、恋愛・結婚について、そしてこれからの人生のことについても話は深まっていきます。
(一部ネタバレを含みますので、ご注意ください。「前編」はこちら。)
【座談会参加者】
◆Aさん ウェブ編集者・独身(子ども2人)・41歳
◆Bさん 映画宣伝・独身・44歳
◆Cさん ウェブディレクター・独身・42歳
――多子とはシチュエーションの違う女性たちも描かれていきますね。先ほども話に出た、元同級生の塔子は、大学生の子供がいる主婦で、そのまま地元で暮らしています。
B いつも同じ業界の人たちといると、みんなあまり環境が変わらずにそのまま年をとっていくから、なんとなく時間が止まっているような錯覚を起こすんですよね。でも地元の友だちと同窓会とかで会うと、ちゃんと家庭を築いていたりして、「こういう人生もあったんだよなあ」と思う瞬間はあります。自分がそうなりたいかと言われると違うかもしれないんですけど……。シングルマザーになってめっちゃ大変な子もいますよね。独身でへらへらしている私と違って超たくましく生きていてすごいなって思うこともある。
――30代の時と今とでは、なんとなく違う環境にいる彼女たちへの目線や接し方も違うような気がしますよね。お互い大変だよね、と心から思えるようになったというか。
B 30代のころは、他の人を見る余裕もなかったですよね。もう毎日本当に生きるか死ぬかじゃないですけど、仕事でいっぱいいっぱいで。
A 全然違う場所にいる人と触れ合う余裕は、今よりもっとなかった。
――Aさんはご結婚されて、お子さんもいらっしゃるんですよね。
A はい。でも離婚したばかりなんですよ。今は子ども2人と暮らしています。私は20代で結婚して、子供を産んでからも仕事も続けていたのでずっと余裕がなかった。今、子どもが大きくなってやっと少し余裕が出てきたところなんですけど、私の周りでは30代とか40代に入って結婚する人が多かったので、まだ子どもがちっちゃかったりするんですよね。忙しい時期がずれてしまって、またうまく交わることができない状態にもなっている。なので、高校時代の友だちでシングルの子と会うことが多いかもしれないです。
B 40代になって結婚して、今、妊活していたりする人もいますよね。そうすると仲が良かった友だち同士で会うことになっても、子どもがいる子と妊活している子は同じ場に居にくい、みたいなこともあるらしくて……。
A・C ああ……。
B 私は全く蚊帳の外なので、そういうことになかなか気づかないわけですよ。だから「なんであの子は誘っても来ないんだろうね?」なんて言ってしまって、「はっ! そういうことがあるんだ!」って気づいたりして。
A 男の人は子供がいようが結婚していようがずっとつるめるんだけど、女の人は状況によって交わる人が変わりますよね。なので無理やり一緒にいようとしても、お互いいい時間が過ごせるとは限らないし、やっぱりしんどい。
C しばらく会っていなかった人から急に連絡がくると、構えちゃいますよね。何を目的にしているのか……私を今どういう状況だと思っているのか、と。塔子は手紙でしたけど、このSNS時代、急に連絡が来ることは結構ありますよね。懐かしくて、みたいな向こうの気持ちもわかる。仲が良かった頃の気持ちのまま、こっちを思ってくれているんですよね。でも自分は余裕がなくて忙しかったりして……。だから、それでも塔子と会った多子はすごく偉いなと思いました。
――多子は最初「会わなくても別に…困らない… やでも会ったら会ったで…」とものすごく乗り気だったわけでもなく。でも会ってみたら「楽しいな」と思いますね。
C でもここからですよね。1回目は楽しいけど……という。
A 1回目は高校時代の話をいっぱいして、じゃあ次もう1回っていう風になるかといったらそこは必ずしもそうとは限らないかもしれないですね。
――多子も「これからも連絡をとっていい?」と聞かれると一瞬つまる。でも若い男の子に言い寄られていることをちらっと聞いて、もっと話したくなったのか「ライン交換しよ」と言いますね。
A その感じもリアルですよね(笑)。
C 多子は、実際に塔子に会ってほっとしたと思うんですよ。「あ、邪気がない」って。探ってくるようなところもないし。
――多子が「めちゃくちゃはりきって」おしゃれして行ってしまい「やばい」と思った瞬間に、「すてき!! やっぱり今もおしゃれだね~」と素直に言ってくれて、すぐに普通に話せるようになりますね。
――どちらかに邪気がなければ、状況がいろいろであっても、うまく友情が結べるのかもしれませんね。
A どんな環境にいても、それぞれに満足いく状態であればいいと思っていて。お互いを否定は絶対したくないし、どっちが上とか下とかも絶対にない。だからといって無理やり手をつなぐのも違うというか。ただ共生してればいいんじゃないかなって思います。
B・C そうですね。
40代から考える、恋愛・結婚
C 多子の恋愛問題も気になりますよね……。
A・B 気になる!
A なんか、元カレからメールがガンガン届いてるのに開封できない、というのがすごいわかる!と思って。こわくて見れない、という(笑)
――みなさんは恋愛や結婚についてどうお考えですか?
C 私は常にやぶさかではない気持ちでいます。
一同 笑
A 私は結婚は継続できなかったですけど、人生のパートナーみたいな人は、将来的にすごくほしいなと。まだこれから人生が40年くらいあって、このまま何もないのはいやだなと思ってしまいました。
B 確かに好きな人はほしいですよね。でもなかなか周りに相手はいない……。
C 映画業界だと個性の強い人が多そうですよね。
B そうですね。そういう人たちとうまくお仕事していかないといけないので、周りからは「猛獣使い」と呼ばれています(笑)。なので「つきあう」となると、また違うのかなと。結婚に関しては……周りに結婚して幸せになった人があまりいないんですよね。なので、どうしてもデメリットの方を先に考えてしまう。母はいまだに「本当にずっと一人なの? そろそろ自分の人生を考えたほうがいいんじゃない?」みたいなことは言うんですけど。
C 私は実家と東京の部屋とを半々くらいで行ったり来たりしてるんですけど、ある日を境に……39歳くらいだったと思いますけど、母からは何も言われなくなりました。前は帰るたびに「〇〇ちゃんは二人目を産んだんだって」とか言っていたのに、何かを飲み込んだ、というか(笑)。
――多子も仕事が好きで頑張っていて、結婚していないことで「足りていない」ということもなさそうですよね。Cさんが何も言われなくなったのも、お母さまが「東京で楽しそうにやっているからいいかな」と思ったのもあるのでは?
C そう見えているならいいんですけど。ただ親の立場からすると、今はまだ元気で自分のことは自分でできるからいいけれど、老後に誰もそばにいないのは心配、という気持ちがあると思うんですよ。
――実際にそう言われたことはありますか?
C いや、ないですね。「口に出したら現実になる」と思っているのかもしれない(笑)。
B 母は私がいないところで、私が一緒に暮らしている甥っ子に「ちゃんと叔母さんの(Bさんの)老後の面倒を見なさいよ」っていうプレッシャーをかけているらしくて。私はそこにぜんぜん期待していないからやめて、と母には言っているんですけど……。甥っ子は飄々としているタイプなのできっと笑顔で「じゃ、元気で生きて! 僕は別の道を!」ってことになると思う(笑)。
――すばらしい叔母さんですね。
B 期待して裏切られるのは辛いので、最初から期待をしないほうがいいなと。
――Cさんは「やぶさかではない」ということは、結婚もありだなと?
C そうですね。ちょうど40歳を越えたくらいになると、鮭がもう一度川に戻って来るみたいな感じで、男性の方も離婚したりしますよね。状況が1回リセットされる。だからわからないんじゃないかな、と。30歳くらいの時は「このままかな?」と思っていたんですけど、逆に今は「あれ、潮目が変わった?」みたいな。
A 3組に1組離婚しているわけですから、よりどりみどりですよね(笑)。事実婚とか法律婚とか、今はいろいろ選べますし。もう1回結婚するなら事実婚かなと。
B 私も、もし結婚するとしても事実婚がいいかなと思っています。
今が、新しいことを考え始めるのにちょうどいい時期
――老後の話が少し出ましたが、40代になると、老後のお金をどうするんだという問題もリアルに迫ってきますよね。多子が2,180,500円の預金残高を見て「死ぬのも怖いが/生きるのも怖い」と思うシーンがありますが、30代ではあまりない感覚なのかなと。お金のことはどう考えていますか?
B 全然考えられていないですね……私はここ数年で家族を亡くしているので、今すぐ死ぬといろんな人に影響を及ぼすな、と考えるようにはなったんですけど、本当に数字が苦手で……。お金は好きだと思っていたんですけど、株の専門家の友だちから話を聞いたりすると、そこまでお金のためには生きられないなって思ったりします。
C 私も本当にダメです。親戚に株の仕事をしている人がいるので、延々言われるわけですよ。「お金に働いてもらわないでどうするんだ」って。
B お金に働いてもらう!
C でもただ放っておけばいいものでもないし、元本保証もない世の中だし、私は箪笥預金でいいやと。銀行すら信じていないので。
――本当にタンスで現金を保管しているということですか!?
C 比喩じゃなく(笑)。あと本当に恥ずかしい話なんですけど、お金のことは母に全部任せているんですよ。母からお小遣い的なものをもらって、生きている。
――それをタンスに保管して。
C はい。だからそれ以外の、自分の貯金額は知らないです。たまに実家がリフォームとかしているのが、ちょっと気になってはいます。
一同 爆笑
A 私もお金のことは苦手なんですけど、離婚を考え始めた時に、やっぱり何かしなくちゃいけないと思って……子供もいますし。いろいろ勉強して、積み立て投資信託を始めました。
B えらい! 素晴らしいですね。
A 危機感を持つと、やっぱりどうにかしなきゃって思うんだと思います。早ければ早いほうが良いらしいんですよ。年数を稼がなきゃいけないので。保険もなんでもそう。
C 言われていることは100%わかるんですよね……でも、フリーランスとして仕事をすることが多いので、投資の勉強をする時間があるんだったらその分稼いだほうが早い、みたいな感覚がまだ残っていて……よくないなとは思っています。
B わかります。ただ、今以上に働いてお金を稼ぐというのが、体的に無理じゃないですか。そうなると、単価を上げるしかないのか……とかいろいろ考えますよね。何歳まで仕事できるかもわからないし。
A 70代では確実に仕事しないと生きていけないですよね。あと30年もある。そう思うと、本当に楽しく生きたいですよね。
C 40歳くらいって、仕事の転換期でもありますよね。実績も積んできて、いろいろなことがあまり悩まなくてもできるようになった。ここで新しい何かを身に着けるのか、このままやっていくのか……という岐路に立たされるというか。長年やってきた仕事にちょっと飽きてきた自分もいたりして。
A わかります。だけど今からまったく新しいことをするのはリスクも高いし……。
C でも最後のチャンスでもありますよね。50歳、60歳になって新しいことをやるのかというと、そういうわけにもいかない。今がスタートとしては一番いいのかもしれなくて。周りにも、同じようなこと言っている友だちが結構増えてきているんですよ。お子さんを産んで復帰する時に、会社に入るというより、今までの経験を生かして気心の知れた仲間たちと何かやりたいと思ったりするみたいで。体の問題とか、将来的なお金の不安とか、それにさっきAさんがおっしゃった楽しく生きていきたい気持ちとか、いろいろひっくるめて考える時期に来ているのかなと思います。
B そうですよね……私は、今までわりと「手伝ってくれ」と誘われて、いろいろな会社でお仕事をしてきたんですよね。自分から「あの会社に行きたい!」と思って入ったことがなくて。
――必要とされ続けてきた、ということでもありますよね。
B ありがたいことではあるんですけど。新しいことを考えるのにちょうどいい時期だなと思いつつ、「自分に何ができるだろう?」と立ち止まって考える日々です。
C だんだん仕事を依頼してくれる人が年下になってきませんか? 自分が依頼する立場になることもありますけど、年上で偉そうにしている人には頼みたくないし、実際そういう人がみるみる仕事をなくしていくのも見ている。ここからは、さっき言ったみたいにチャームで生きていくか、下の人からも依頼され続ける唯一無二の才能としてやっていくか、あとは自分で場を作っちゃうか、になってくるのかなと。できればチャームで生きていきたいですけど……自分でそうなろうと思ってなれるものでもないですし。難しいところですね。
――みなさんの話を聞いていても、多子や塔子を見ていても、40代というのは大変なこともあるけれど、充実もしていて、おもしろい時期なんだなと思いました。
A そうですね。最近ちょっと自分の状態が飽和気味というか、新しい刺激が欲しいなと思い始めていたところだったんですよ。だから今日、みなさんとお会いできるのをすごく楽しみにしていたんです。同年代の、違う仕事をしている人たちがどう考えているのか知りたいなと。
B・C うんうん。
――塔子も、多子とそんなふうに話をしたいと思って連絡したんでしたね。
A いろいろ話せて、うれしかったです!
B すごく楽しかったです! 共感の嵐でした。
C まだまだ……このまま永遠に話していられますね。
A・B 本当にそう(笑)!
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待望の第1巻は6月13日発売!
- あした死ぬには、 1
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著者:雁須磨子
価格:1,200円+税
発売日:2019.6.13 歳をとるのは怖いですか? 切実に生きる女子たちの心に寄り添い、そっと背中を押してくれる本。
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「『こういう感情や経験ってあるなあ』とものすごく共感できる、
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