太田出版ニュース
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2024年も「太田エロティック・マンガ賞」に多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。今回はエロティクス賞1作、優秀賞1作、奨励賞2作、あわせて4作品が入賞となりました。山本直樹による講評も添えて、ここに発表いたします!
【2024年】太田エロティック・マンガ賞
審査員:山本直樹、太田出版編集部、pixiv編集員
賞金:エロティクス賞 10万円(1名)、優秀賞 5万円(1名)、奨励賞 3万円(若干名)
次回の募集については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内します。
エロティクス賞
賞品:pixivコミックに掲載、賞金10万円
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- 山本直樹 講評
今回では一番良かったですね。絵がすごく魅力的だし、キャラクターの作り方も、ちゃんと人が生きて動いている感じがします。日常のセックスを描いた内容は、ありがちといえばありがちなんだけど、このマンガは、ちゃんと読める内容になっているし面白い。びっくりする何か、っていう感じではないですけど、こういうエッチな感じはいいなあ。線とベタがいいですよね。全体的に白いけど、黒ベタとのバランスが素晴らしい。もっといっぱい読みたくなる作品だと思いました。
優秀賞
賞品:賞金5万円
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- 山本直樹 講評
絵が可愛くて上手いですね。お話も自然に読めちゃいました。商業ですでに活躍されている方というだけあると思いました。女の子がとても魅力的で、読んでいて、今回一番性的に興奮したマンガかもしれない。
奨励賞
賞品:賞金3万円
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- 山本直樹 講評
ざっくりした言い方ですけど、マンガとして“ちゃんと”している。見開きに必ず「ここを見せたいんだ」という見せゴマや決めゴマを入れることを意識して動かしていくと、もっと起伏のある作品になると思います。それは別に絵的にでもいいし、内容的にでも、何でもいいんです。
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- 山本直樹 講評
絵が上手くて、手描きなのかデジタルなのか…、どのように描いているのかが気になりました。話自体は、DVをテーマにした作品が世の中に多くある中で、特に目新しい印象は無かったです。最後の方で、女の人の顔が怖くなるのが良かったですね。自分の世界を持っているだけに、ここからなんかちょっと飛び出す感じがあれば、もっと面白くなるのかなと思いました。
総評
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- 山本直樹 講評
今回、全体的に文字が多い作品が多かったと感じました。マンガでは、文字説明でストーリーを理解させようとするのには限界があるんです。小説でも、やっぱり地の文だけでストーリーを展開していくのはすごく難しいじゃないですか。
僕のマンガも文字は多い方ですけど、今、OhtaWebComicで描いているエロマンガだと、そのシーンのエロさを付け足すために文字を載せている訳で、単純に、文字の多い少ないではなく、意識的に効果を狙っています。
反面で、文字が多いマンガでもすらすら読めちゃうものもある。そういった作品は、文字運びがスムーズなんじゃないかな。無理やり文字で持っていこうとしてないというか。その辺はもう、描くひとり一人が、「ここ要らないな」「ここいるな」というように、推敲するしかないんです。
自分の描いたマンガは、描いてる途中でも、やっぱり何回も読み返したほうがいい。そこで飽きるようだったら、それはその時点で大したことがない、人に読ませる段階に無いマンガということです。中にはもともと天才肌で、一発で決められる人もいるかもしれないけれど、天才じゃない僕らは、そうやってコツコツやっていきましょう。
逆に、文字は少ないのにうるさいと感じる作品もありました。絵と文字のぎこちなさで、読む気がしなくなっちゃうものもある。マンガは絵と文字でできているので、思いついたままに、「俺はこう思って、次に俺はこうしようと思う」っていうのを全部出しちゃうのは、作品としてのバランスを欠き、読んだ時にうるさいだけになります。自分の脳から出てきたものを、もう一回推敲しましょう。とても初歩的な話ですが、実はとても大事なことだと思います。
最終選考通過作品
惜しくも入賞とならなかった最終選考作品への講評も多数発表!
芸人マンガ『相方、恋人』「相方、恋人」
登場人物たちの関係性が面白いです。会話もいいんですけど、単純に長い。この人たちのことをずっと長いこと追いかけていきたいっていう作者の気持ちは分かるんですけど、ちょっと淡々としすぎています。マンガは、やっぱり読む人をぎゅっと惹きつけてなんぼなんですけど、そういう華というか、魅力みたいなものがちょっと足りないと感じました。
おっ○いの定点観測「えちえち定点観測」
1ページマンガをいくつか投稿いただいたのですが、面白い作品を書けそうだと感じたので、是非、長めのストーリーマンガも書いてみてください。
楽gaki「全身ギプス」
エロくてちょっと面白いんだけど、ここまで長くすることはないんじゃないかと思いました。人を惹きつけるというのは、別に波乱万丈をやれというわけじゃないんですよね。淡々としてても、なんだか惹きつけられる作品ってあるじゃないですか。具体的に「こうしよう」と言うのはなかなか難しいんですけど。
ドット「僕の容量」
今こんなネタで延々とやるの? 変なのって思いましたが、面白かったです。エロという感じではないんだけど。
酸髄かなで♂「泣き虫」
狂ってますね…。もうこれはこの人の世界なので、そのまま突き進んでください、ということで。
広瀬海斗「オナニーの呪縛」
絵がかわいい。話自体は途中というか、何かの長い物語の冒頭みたいな感じもあるけれど、ちゃんと読ませる魅力のあるいい作品だと思いました。絵柄は全体的に白いけど全然スカスカな感じでもないし、ここから先が読みたくなりました。
shigeking MAX「一人で逝けよ」
これは問題作ですね。内容自体は斬新じゃなく、こういった題材のマンガは結構ありますよね。全体的にちょっとストレートすぎるかな。悪くはないんですけど、僕の個人的趣味として、あんまり暴力的なものは苦手ではあります。ストーリーの最後で、女の子の立場が逆転しているけれど。絵上手いですね。いい意味でも悪い意味でもこれだけ描けているのはすごいです。
一緒くた「真新しい愛」
上手いですね。この雰囲気でいっぱい書いて欲しいなと思いました。絵も、言葉も、とてもいいなと思いました。僕は好きです。ちょっと会話だけで進めちゃったり、もうちょっとサクサクしたほうがいい場面もあるところがもったいなかったですね。
あ「応募」(みつき「二人の部屋」)
絵が魅力的ですね。そんなに山とかある話じゃなく、マンガとして、平凡な印象がちょっと気になりました。
あぴぱるさん「高校生の七瀬君は性欲と闘っている」
面白かったです。普通にマンガとしてストーリー性もあるしエロいし。ただ、整いすぎている。そういう意味で、引っ掛かりがないと感じました。
DM「初富士」
全体的に絵柄が白いけれど、いい絵だなと思いました。ところどころ、急いで描いてるように見えなくもないけれど、それは本人のペースなので。女性の下半身のシルエットが、富士山に見えるっていうことですね。12ページと短いわりにはお話があると感じました。
藤田さもり「休みの日のぼくら」
絵がすごい魅力的だし、性器が付いてない体の人たちが、一緒に裸で絡んで暮らしたりというストーリーは、ありそうであんまりなかったのではないでしょうか。ストーリー的にどこかすごいフックがあるというわけではないのですが、なんか読んじゃう。このストーリーを16ページで描き切っているのもいい。こういう作品をもっと描いていったら、自分の中で変なものが出てきて、さらに面白いのができるかもしれないです。
黒宮骸「もう死ぬので最後に一発ヤらせてください」
男の子が無理のあるキャラクターとはいえるんだけど、そういうのを描きたかったのかな。女の子の方が、ボケに対するツッコミとしてキャラが立っていますね。自分の部屋を覗いている男の子に対して裸になるっていうのはすごく良い見せ場です。多少無理な展開ではあるけど、読んでいる間は、無理だと思わずに読んじゃうんで、いいと思いました。
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