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ノンフィクション・人文
価格 |
3,080円 |
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判型 |
四六判並製 |
ページ数 |
400ページ |
ISBNコード |
9784778316204 |
2018.4.2 |
書籍の説明
お尻の穴は男も女も持っている。ペニスにもヴァギナにもとらわれない究極のジェンダーフリー、アヌスから考える新しい文化論。
ペニスを挿入する男らしい支配者を頂点に戴く社会は、女であることを嫌うミソジニーの社会であり、男が女の役割をする男同士の同性愛を嫌うホモフォビアの社会でもある。本書は、男性同士のアナルセックスを描いた文学作品や映画や絵画などを取りあげ、これまでとはまったく違う解釈をしてみせることで、この男根中心主義、ホモフォビアに支配された社会規範に真っ向から挑み、パラダイム・シフトを仕掛ける。その立役者に抜擢されたのが、男も女も平等に持っているお尻の穴である。
イギリスの「変なタイトル賞」受賞作であり、著者はブランドン大学でクィア論やジェンダー論を研究する助教授であり、「文学批評と現代の生活においてアヌスは無実の罪を着せられている」と真剣に憂いている。英語には「arsehole」「ass wipe」(どちらもマヌケなど、)「pain in the arse」(問題児、悩みの種)などの表現があり、このような表現は一般にホモセクシャル、不能、ひ弱さと結びつけられている。映画化もされた『ブロークバック・マウンテン』などのポピュラーな小説を題材に、文化の中のアヌスの扱われ方を論じることでファロセントリズム(男根主義)から脱却し、ジェンダー、特に男性性を新たな視点から検討する。
原題:Reading from Behind: A Cultural Analysis of the Anus
目次
序章 まちがった扉はない―入口にかえて
第一章 アヌス論、あるいはアナル読み
第二章 ヴァージニティとは
第三章 攻めるネコ――アン・テニノ『男子寮生とタチの恋人』
第四章 『ブロークバック・マウンテン』を位置づける
第五章 植民地主義の尻を叩く
第六章 デルミラ・アグスティーニ「侵入者」を解錠する
第七章 恥ずべき母親愛好症――《エルリンダ夫人と息子》
第八章 復讐に燃えるヴィダル
補章 妄執的読解と補完的読解について
謝辞
訳者あとがき
NOTES
著者プロフィール
Jonathan A Allan(ジョナサン・A・アラン)
カナダのブランドン大学ジェンダー・女性研究および英語・創作の准教授。クィア理論研究者としてカナダ・リサーチ・チェア(訳注、カナダ政府が優れた研究者に助成金を交付して研究を支援する制度)に任命されている。『ヴァージンの羨望――文化からみた処女膜の(非)重要性』(Virgin Envy: The Cultural (In)Significance of the Hymen、二〇一六年刊)の共編者・著者。現在は社会学、宗教、生物医学、文化、文学、クィア理論など多角的な観点から包皮の文化についての研究をまとめた『切られてない――包皮の文化的分析』(Uncut: A Cultural Analysis of the Foreskin)、ハーレクインのロマンス小説から『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』まで幅広い小説を題材に男性の肉体や男らしさとは何かを考察する『男と男らしさとロマンス小説』(Men, Masculinity, Popular Romance)を執筆中。また、象徴としての男根ではなく、肉体としてのペニスを人々がどう考えているかに迫る共著『フルパッケージ――美学と男らしさと市場』(The Full Package: Aesthetics, Masculinity, and Marketplace)の執筆も進めている。
レジャイナ大学出版「優美な屍骸」シリーズの編者であり、米国男性研究学会副会長のほか、「凶暴なフェミニズム」(Feral Feminisms)、「ロマンス小説研究」(Journal of Popular Romance Studies)、「男性研究」(Journal of Men’s Studies)、「チャスキ――ラテンアメリカ文学」(Chasqui: Revista de literatura latinoamericana)(訳注、チャスキはインカ帝国時代の飛脚のこと)、「男性性――アイデンティティと文化」(Masculinities: A Journal of Identity and Culture)の各誌で編集委員を務めている。
北綾子(きたあやこ)
翻訳家。日本女子大学大学院修了。大学助手、教員を経て翻訳者となる。訳書に『ローマ貴族 9つの習慣』(太田出版)、『英国王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ』(河出書房新社)など。