「生産性を高くもち成長したい」美術家・大山エンリコイサムが描く未来
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「生産性を高くもち成長したい」美術家・大山エンリコイサムが描く未来

今月29日まで、銀座のTakuro Someya Contemporary Artにて早川祐太との二人展「フィジカルの速度 / Physical Kinetics」(http://tsca.jp/ja/exhibition/physical-kinetics/)を開催中の美術家・大山エンリコイサム。「Quick Turn Structure(急旋回構造)」というグラフィティ・レタリングの造形要素を取り入れた独特なモチーフの作品が特徴で、壁画やペインティングはもちろん、論文の執筆や評論活動、2012年春夏のパリ・コレクションではCOMME des GARÇONSにアートワークを提供するなど幅広い活動が注目されている。そんな彼は10月からニューヨークへ移住するという。その姿勢から自身の作品制作に対するストイックさが見えてきた。

*  *  *

 高校の終わり頃に雑誌でヨーロッパのグラフィティ・アーティストの作品を知り、自分も将来こういうことを仕事にしたいと思いました。大学に入学してからは自然とクラブやカフェでライブペインティングをするようになり、その頃に同じようなサブカルチャーの現場で活動をしているペインターとたくさん知り合いましたね。その後すこし変化を求めて、東京芸大の大学院に進み、現代美術や美術批評の世界を知りました。

 現在は美術家としての活動に専念しています。作品制作では、ひとつのことを洗練させて純度を高めていくプロセスと、いろいろなことを実験的にやって散らかしていくプロセスとのバランスには気を配っています。また評論活動もやっているので、作品制作と言語化の作業を並走させつつ、その相乗効果も狙っています。

 そんな風に毎日なにかしら仕事は進めているので、「オン・オフ」という考え方はあまり持っていないんです。空いた時間にはなるべく読書をしたり展覧会に駆けこんだりしていますね。そういう毎日の行動や積み重ねは制作にも返ってくるので、それも仕事の一部をかたちづくっています。

 つねに生産性を高めていたいのですね。すこし堅苦しいかもしれませんが、普段から、自己批判的に成長できること、正直であること、つねに前進すること、自分の意見を持つこと、他人の意見にも開かれること、などは大切だと思っています。

 10月からニューヨークに移住を予定しています。グラフィティやストリートアートをより深く調査し、それを自分の制作へフィードバックしたいと思っているんです。数年後に、現地で得たさまざまな知識や経験、社会資本を元手にして、日本でストリートアートをテーマにした大型の展覧会を企画できればと考えています。

【プロフィール】
大山エンリコイサム(おおやまえんりこいさむ)
美術家。1983年、イタリア人の父と日本人の母のもと東京に生まれる。慶應義塾大学卒業後、東京芸術大学大学院修了。2011年秋のパリ・コレクションではCOMME des GARÇONSにアートワークを提供するなど積極的に活動の幅を広げている。主な展示に「あいちトリエンナーレ2010」(名古屋市、2010)、「Still Spot」(スカイライト・ギャラリー、ニューヨーク、2012)など。共著に『アーキテクチャとクラウド―情報による空間の変容』(ミルグラフ、2010)、論文に「バンクシーズ・リテラシー――監視の視線から見晴らしのよい視野にむかって」(「ユリイカ」2011年8月号、青土社)など。アジアン・カルチュラル・カウンシル2011年度フェローシップ(ニューヨーク滞在)。

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