入江悠が語る、映画制作の魅力とは
- Sep.19,2012
『SRサイタマノラッパー』シリーズ(2009)や、『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンローツは鳴り止まないっ』(2011)など次々と話題作を世に送り出す入江監督。そんな彼に映画制作の魅力について聞いた。
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親が映画好きで、子どもの頃はよく映画館に一緒に連れて行ってもらっていたんですが、高校生のときにWOWOWに加入して岡本喜八さんなど古い日本映画の作品を観て、自分もこんな作品を作ってみたいと思ったこと映画監督と目指すきっかけでした。大学1年生のときに初めて音声もないような8ミリカメラで映画を撮ったんですが実際撮影してみたら、今まで見てきたものと比べて全然クオリティが低くて愕然としました(笑)。
映画づくりでは、自分にない発想を他の人が出してくれたり、おもしろいものが人から出てくることに敏感に耳を傾けられるように意識しています。自分のしたいことを押し通すエゴももちろん大事なんですけど、そこのバランスをとりながらひとつの作品を創り上げていくのが集団作業の楽しいところですね。
映画は自分が創ったあと、一人歩きして行くものだし、死んだあとも残るもの。自分が恥ずかしくないと思えるものを創れているかどうかの確認作業は常にしています。
作品を撮るにあたってさまざまな職業の勉強をするのですが、埋もれてしまう仕事でも、どの仕事にもそれぞれに面白さがあるということを感じました。たとえば、刑事ならすごい地味なことの積み重ねをしていって成果を出すとか、JAXAの取材をしたときは、すごく大勢の人が、それぞれ役割分担して自分の仕事を完璧に果たさないと、衛生を飛ばすことに成功しないということを目の当たりにして、おもしろいなと思いました。映画より長いスパンで、しかもミスが許されない、それでいて集団作業っていうところがすごい。
これからの映画には多様性を残してほしいと思う。フィルム映画も少しずつ縮小してしまったけど昔からの伝統も残してほしいと思うし、一方でデジタルでの映画を撮りやすくなっているので、色んな種類の映画が大小問わず共存して行ければ良いなとは思いますね。映画館もシネコンからミニシアターまで色んな形態が生き残っていけると、全体的に作品の質が底上げされて映画界全体が盛り上がっておもしろくなるはず。僕は誰と比較をするでもなく、自分がやりたいと衝動を掻き立てられるものだけを撮り続けていきたいですね。
【プロフィール】
入江悠(いりえ ゆう)
映画監督。日本大学藝術学部卒。『SRサイタマノラッパー』で第50回日本映画監督協会新人賞、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。他の作品に『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』『劇場版・神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』など。