BMXライダー・伊東高志が語る「1台の自転車が持つ可能性」
- Sep.25,2012
満月をバックにBMXのペダルを漕いで空を走るクライマックスシーンが有名な映画『E.T.』。伊東高志は、その映画を観てBMXを始めたという兄の背中を追いかけて12歳の時にトリックをするための本格的なBMXを手に入れたという。それから24年。ライダーとして第一線で活躍しながら、BMXの全日本選手権「King Of Ground」の運営、ストリートブランド「430」を手掛けてきた彼に、BMXの魅力とその可能性について聞いた。
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BMXの魅力はいくつもあるのですが、あえて絞って挙げるとするのであれば他人とは違う"視点"を持てることです。BMXはオリジナリティが高く評価されるので、ただ技術的に上手く乗れるだけではライダーからの賞賛や支持を受けることはできません。トリックのオリジナリティを追求していく過程や、自分なりのライディングスタイルを磨いていく過程で"他とは違う"BMXの格好良さを様々な角度から求めていくようになるんです。そして、その見方と視点が実は実生活でも他の趣味の世界でも応用できることに気がつくようになります。人によってこだわりの差や程度の差もあるとは思いますが、BMXの世界にオリジナリティを高く評価する土壌があることで誰もがそういった違う"視点"を持ちやすい環境にあると思いますね。実際、自分も今の仕事(商品企画)にそれがおおいに役立っていると感じているので。
そして、BMXと一緒に回った世界各国での経験や各国の友達、その国の人たちとの言葉だけではないコミュニケーションを通して得た視野は自分の何物にも代え難い財産だと思っています。自分たちが生まれてから蓄積してきた習慣や常識や価値観が、他の環境で育った人にとっては当たり前ではないことを肌で感じて体感してきました。頭で理解することと体感することの違いはあまりに大きく、そのギャップの大きさが自分の経験値の重みとして身になっていると感じます。多くの人が簡単にはできない貴重な経験をBMXという一台の自転車がさせてくれたと思うと、BMX自体の楽しさと同時にこういった違う面でBMXが持つ可能性を伝えたいと思う気持ちは強いですね。
大切にしているのは、自分を信じること、自信を持つこと。考えることである程度自分自身をデザインすることができ、そこに行動が加わることでいろいろな経験ができて自分が出来上がっていく。自分らしさはその結果として滲み出てくるもの。ライディングとすごく似ていると思います。ライディングにもその人らしさが自然に滲み出てくる。だから自分らしさを醸し出す「経験」の素になる考えと行動をより強く深くする自信が大切だと思います。
【プロフィール】
伊東高志(いとうたかし)
1976年9月14日生まれ。BMX歴24年。2000年 「King Of Ground」シリーズチャンピオン(全日本チャンピオン)、アメリカ「Bicycle Stunt Series」年間ランキング5位、「Summer X-Games」9位、2002年 Asian X-Games 優勝、RedBull Circle Of Balance選抜出場 12位タイ。