フォトグラファー・橋本塁は、ライブ写真を撮らないと体調が悪くなる?
- Oct.1,2012
小学校の頃、父親が車で「BOØWY」の曲を聴いていたことから音楽に興味を持ち始めたという、フォトグラファーの橋本塁。アパレル業界で働いていた頃、初めて観た「Hawaiian6」のライブの格好良さに圧倒され、気づいたら持っていた「写ルンです」のシャッターを押していたという。その後、昼は雑誌の社員カメラマンとして働きながら、夜は自分の好きなバンドを撮り続けるという生活を3年半ほど続け、独立。彼がライブ写真を撮り続ける理由とは何なのだろうか。
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フリーになってから作品を持ち込んだりして「営業」をしたことは一度も無いんです。仲の良いバンドからの紹介や、ライブの打ち上げで仲良くなった人の横のつながりで仕事をいただくことが多く、それは今も変わってないですね。幸か不幸かそういう男性バンド写真の撮影依頼しかこないですけど(笑)。
ライブ写真って、本番はその場限りだから被写体に対して何の注文もつけられないんですね。僕はリハーサルからバンドと一緒に入って、その日の曲順だったり照明の具合を見て、どこで撮るのが適切か決める癖があるんです。誰がどういう動きをするかなど、撮るバンドを理解するということは大切にしているし、自分がいかにそのバンドのクルーになれるかっていうことを意識しています。
小さい頃の自分に自慢したいことは、大好きなBOØWYのギタリストだった布袋寅泰さんのオフィシャルライブの撮影をしたこと。さすがにBOØWYファンの父親には自慢しましたね(笑)。最初、フリーになったときに父親から反対されていたんですが、親が知っている人を撮ったときにやっと認めてくれたんです。それはミュージシャンの方の親が、子どもが紅白歌合戦に出たことでやっと認める、みたいなものに似ているのかもしれません。
ライブ写真は自分の作品だとは思っていなくて、バンドのものだと思っているんです。そのバンドのファンにダイレクトに響く写真を撮りたいし、そのバンドを知らない人が僕の撮った写真を見て、そのバンドの音源を聴いたりライブに来るきっかけになるのが一番の成功だと思いますね。僕は被写体であるバンドのファンでありスタッフでもありますが、対アーティストとして尊敬の念は常に忘れずに持っているので。
僕にとって、写真を撮っているときが一番集中できる"無"の状態なんです。普段はいろんなこと考えて生活してるじゃないですか。いい意味でストレス発散になりますし、スポーツのような爽快感もあります。実は僕、ライブ写真を1週間撮らないと体調悪くなっちゃうんですよ(笑)。写真の腕も鈍りますし。ライブ撮影が立て続けにあったほうが調子いい。だからライブ撮影がない日が続いたら極力、友だちのバンドとかに頼んでライブの写真を撮らせてもらっています。僕はこれを「自主練」って呼んでいるんですが(笑)。どんなに忙しくても、写真を撮らない日をなるべく作らないようにしていますね。
【プロフィール】
橋本塁(はしもと るい)
1976年北海道生まれ。24歳の時ジーンズのパタンナーから突如カメラマンに転
身。雑誌『ollie magazine』の社員カメラマンを経て2005年にフリーランスに。
ONE OK ROCK、THE BAWDIES等、様々なアーティストのオフィシャルライブ、アー写等を担当。