映画監督、村松亮太郎 「ポリシーに縛られたくない」理想はタコ?
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映画監督、村松亮太郎 「ポリシーに縛られたくない」理想はタコ?

 映画『LOVEHOTELS』(2006年)などで知られる映画監督の村松亮太郎。映像などのクリエイティブカンパニー「NAKED inc.」の代表としての顔も持ち、日本のみならずハワイ、LA、上海など海外にも拠点を置き、数多くのクリエイティブ・ワークを手がけている。そんな村松監督に仕事観、人生観を聞いた。

*  *  *
 職業柄、常に感性を鈍らせたくないとは思っているので、刺激が欲しいし、毎日、旅人な気分です。旅人というのは、場所を移動するってことだけでなくて、映画を作るのも旅だし、役者も違う誰かになる旅ですよね。会社を運営するのも旅だし、生きてること自体が全部旅してる感覚なんです。旅する必要性がなくなったら、もう多分映画も作らないし、生きてないかも。

 仕事のスタンスなんですが、ピカソが「なぜ、あなたは作品を完成させないんですか?」と訊かれた時に、「仕上げるとは何だ? それはこの世の終わりだ!」と言ったそうなんですが、ああそうだなあ、と。未完成なもの、カオティックなものから創造が生まれるんだと思うんです。ある種の未熟さだったり、未完成さだったりって重要で、「分かった!」と思ったら終わりです。でも、歳を重ねると、変に分かってきてしまう部分もあるし、敵はそういう固定概念ですね。

 だから、ポリシーに縛られてしまうのは嫌なんです。よく言っているんですが、理想はタコです(笑)。軟体動物のように、いつも柔軟にいかようにも変われることを大事にしたい。なんというか、ものすごく曖昧なものではあるんですが自分としては確かな感覚があって、「これはアリ、これはナシ」というその自分の感覚を信じてやるのみなんです。その感覚を人は美学と呼ぶのかもしれないし、周りから見たら、こだわりが強い方だと思われているんじゃないでしょうか。

 僕が作った映画は全部ぱっと見、題材とか雰囲気はバラバラですけど、どこか自分の匂いがあって、テーマとして一貫したことを決めてるわけでなくても、やっぱり自分が抱えている問題がどの作品からも見えてくる。自分らしさってどうやったって自分がにじみ出てきてしまうものを人がどう評価するかだけというか。自分で自分らしさはこうと決めたら……終わりなんじゃないですかね? 自分らしさを定義するのは自分ではなくて、人が自分を見て評価するものだと思っています。そういう意味では子供のような新鮮な感覚は持ち続けたい。大人であることを周りから求められることも増えますけど、そこに抵抗したくなるんです(笑)。人生は、自分らしさを探す旅なんじゃないでしょうか? だから、日々活動しているんだと思います。

【プロフィール】
村松亮太郎(むらまつ りょうたろう)
1997年、役者業の傍ら、映像ディレクター、デザイナー、CGディレクターと共に、ネイキッドを設立。TV、広告、MVなどジャンルを問わず、アートディレクションを中心に活動を続け、各クリエイティブ誌で当時は珍しかったデジタルベースでの制作スタイルが取り上げられるなど話題を集める。テレビ番組のアートディレクション、広告の分野では映像ディレクターとしてだけでなく、クリエイティブディレクター、プロデューサーとしても活躍。2002年より、オリジナル作品の執筆、ショートフィルムの制作を開始。その後、2006年に劇場公開された長編映画『LOVEHOTELS』(主演:サエコほか)を皮切りに、2010年まで立て続けに4作品を劇場公開した。自身の脚本/監督作品がワールドフェストヒューストングランプリ受賞など、国際映画祭で48ノミネート&受賞中。近年では3Dプロジェクションマッピングを取り入れたMVを制作する等、3Dプロジェクションマッピングに着目し、2012年12月21日〜28日開催の「東京ミチテラス2012」で3Dプロジェクションマッピングの演出を手掛ける。

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