クイック・ジャパン vol.90 のコンテンツ
90号紹介「いとうせいこう×入江 悠」
2010.6.06
『SRサイタマノラッパー』からはじまる、クリエイションの未来
昨年から今年にかけて、一本のインディーズ映画が新しい伝説になった。その名は『SR サイタマノラッパー』。埼玉のフクヤ市を拠点とする......というか地元から出て行かない無名ラップグループ"SHO-GUNG"の、ダサくてイタい日々を描いた青春映画だ。
日本のヒップホップを郊外のゲットーミュージックとして捉えつつ、「何者でもない自分」のあせりやもがき、行き場のない思いを描く。地道な自主上映を繰り返す中、インターネットを介した口コミなどでどんどん噂が広がっていった。草の根からリアルに生まれた"僕らのマスターピース"。
監督は30歳の入江悠。「これがダメだったら自分は映画をやめる」との思いで、全身全霊のソウルをこの一本にこめた。
そしてこの映画のブレイクには、ヒップホップの偉人たちの支援が欠かせない。その支援者のひとりが日本語ラップのオリジネイター、いとうせいこう。世代を超え多大なリスペクトで結ばれたふたりの対談は、ヒップホップや映画のみならず、クリエイションの"起源と未来"を見据えたものになるだろう。(文・森 直人)