クイック・ジャパン編集部ブログ
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QuickJapan 102号 緊急座談会 まだまだ語るぜ!ももいろクローバーZ!【2番目】
2012.7.02
QuickJapan 102号 緊急座談会
まだまだ語るぜ!ももいろクローバーZ!
2番目
前回は特集の裏話をちょこっと交えながら、ももクロの変化を語り合った3名。熱い思いを心の奥に隠し、互いの様子を窺いながらジャブを繰り出すその姿は、まるで修学旅行の夜に好きな子を発表し合う中学生のよう......。いい歳をした大人が大丈夫か? と若干の不安を抱えながら、この1年のももクロの成長に話題は進みます。
【参加者】小島和宏(ライター)×さやわか(ライター)×藤井直樹(本誌編集長)
■あんな玉井さん見たことない
小島 メンバーの成長についてもう少し話したいんですけど、横浜アリーナ(『ももクロ春の一大事2012~横浜アリーナまさかの2DAYS~』)の1ヵ月後にインタビューしたら、以前とはまったく変わっちゃってるんですよ。それまでは誰かひとりが遊びだしたら「わー」ってなって収拾つかなかったんですけど、玉井さんが「今日は時間がないから脱線しちゃいけないんだ」と自分を律してマジメなことしかしゃべらない(笑)。
藤井 僕も102号の取材では、玉井さんの変貌ぶりに驚かされました。あんな玉井さん見たことない(笑)。
小島 でもね、その2週間後に行ったツアーパンフレットのインタビューではまた違うんです。そのときはひとりにつき10分くらいしか時間がなくて、これはもう絶対に脱線できない状況だったんですけど、玉井さんがなぜか以前の状態に戻ってるんですよ!(笑)5人一緒だとあんなにしっかりしてたのに、ソロだったからかなぁ~。それはそれで彼女らしさ全開で面白い内容になったんだけど。
さやわか 説明すると理解してくれるんですよね。「あ、じゃあちゃんとやらなきゃ」みたいな。でも、ダラダラできるってなったら徹底的にダラダラするんですよ。
小島 あのメリハリにはびっくりしますね。こんなこと言うと怒られそうだけど、写真撮影のときとかは、みんなバカ丸出しじゃないですか?(笑)ところが「やりますよ」って言ったら「はい」って。1回スイッチが入ったらできるようになったんですよね。
藤井 なるほど......かなり独特な成長の仕方ですね。
小島 だから特集が月刊のペースでもいいくらいの変わりっぷりなんですよ!
さやわか どんどん変わってきますよね。
小島 やっぱりこういうのはちゃんと記録しなきゃいけないって思う。
藤井 「変わる」と言えば、95号って「ももいろクローバー」じゃないですか。
小島 「Z」のないやつですね。
藤井 あの号が発売されたのが中野サンプラザと同じ4月10日で、当日は会場でも販売させてもらってたんです。「ももいろクローバーの100ページ特集ですよー」とかお客さんに呼びかけたりして。そしたら、ライブ後に改名しちゃって、発売日なのに、すでに「ももいろクローバー」はいないっていう......(笑)。まったく聞いてなかったんで、あれには驚きましたねぇ。
さやわか そうなんですよね。コアなスタッフはわかってるわけじゃないですか。クイック・ジャパンの発売日に名前が変わるって。でも、わかったうえで、あえて「ももいろクローバー」という名前で特集を作らせてくれるわけですからね。
藤井 あの日、宿題をもらった気がしたんです。「Zでいつ特集するの?」という宿題を。
小島 今思うと、95号で前山田(健一・ミュージシャン、ももクロの楽曲を数々手がける)さんのインタビューをやったとき、水木一郎さんの「アニソンは決まりがないからいいんだ。決まったジャンルじゃないからいいんだよ」って言葉を出して、これって前山田さんの世界に相通ずるものがありますねと。そしたらニヤニヤしてたんですよ。で、Zに改名して、『試練の七番勝負』に水木さんが出て「これか!」と(笑)。
さやわか (笑)
■俺ってこんな気持ちにまだなるんだ
藤井 95号を改めて読み返すといろんな発見がありますね。顔つきからして全然違いますし。
さやわか 95号からの流れで102号を読むと、殻を破ってますよ。全然違います。
小島 みんなが不安のまっただ中にいる時期に作った95号には、「この先どうなるかわからない」っていう感じがにじみ出てる(笑)。最初に藤井さんから新宿の喫茶店に呼び出されて「95号で、ももクロをやろうと思ってるんですよ」って聞いたときは、「いやー、早いでしょ」って思いましたけど、でも今考えたらあのタイミングしかなかったですね。
さやわか 僕も突然藤井さんから、「神聖かまってちゃんとやったライブ(『HMV THE 2MAN ~みんな仲良くできるかな?編~ 「ももクロとかまってちゃん」』)を観たんですけど、ものすごいですね!」って電話をもらって。
藤井 その節は唐突にすみませんでした(笑)。あのライブが本当に良くて。「俺ってまだこんな気持ちになるんだ」って、妙に感慨深い気持ちになって......。
小島 (笑)それはわかるな。なるほどね。
藤井 ライブが2月末だったんですけど、3月に入っても95号の企画がまだ決められなかったんです。校了まで1ヵ月切ってるのに。で、「もうこうなったら、心の中のアレをやろう」と(笑)。でも個人的なこの感動を、どういうふうに組み立てれば特集として成立するのか、そもそもこの感動が正解なのかどうかもわかんなかったんですよ。俺は全然違うポイントを見てるのかもしれないぞって。
小島 そして新宿の喫茶店で「アイドルとは何か?」って話を2時間させられた(笑)。あれって特集をやるにあたっての確認作業だったんですね。
藤井 そうです(笑)。
さやわか 僕も藤井さんに呼び出されて。そのときは特集をやるってことは決まっていて、じゃあ何が軸になるだろうって検証でしたね。それで、ももクロはずっと変わり続けて成長していく。だったら早見さんが辞めるんだけど、辞めるってこと自体がひとつの意味になるだろうという案を出しました。
藤井 僕としては「自分が感動した理由は何なのか?」を探求しようと決めた次の瞬間に知った情報が、「メンバーが辞める」だったんですよ。で、それが妙にしっくりきたんです。だからこれを軸にしようと。
さやわか そうやって特集では「辞める」ことを前面に押し出したわけじゃないですか。普通ならメンバーの脱退なんて、なるべく隠そうとするものに思えますが、ももクロの場合、逆に前へ出していくんですよね。今だからこうやって普通に言えるけど、その感覚は当時は説明しにくいものでした。
藤井 そうでしたね。
さやわか 女の子が辞めるのを売り物にしてるのか! みたいな見方もありましたから。
藤井 そうではなく、この「辞める」という選択がグループの将来にどう繋がるかはわからないけど、その瞬間そのものが素晴らしいって内容にしようと。
さやわか 本人たちも自分たちのことをハッキリしゃべれないし、どんなものになりたいのかすらわからない。でもそれで良いっていう。
藤井 そういう特集でしたね。
小島 僕は関係者のインタビューを担当したんですけど、みなさん忙しいから時間が無いんですね。にもかかわらず、全員が予定の時間をオーバーしてしゃべるという素晴らしい取材だった。「まだしゃべりたい」「もっとしゃべりたい」って。僕は95号のときにはメンバーに取材してないですけど、周りの熱がとにかくすごいなあって。せっかくこういう機会なんだから、もっとももクロのこと語らせろ! っていう、あのガツガツした感じがね。
さやわか あと、玉井さんに話を戻すと、ちょうど玉井さんのポジションが変わる過程だった。95号の前に僕は『STUDIO VOICE』のフリーペーパーでメンバーのインタビューをやったんですけど、そのときも玉井さんは要所で良いことを言ってたんですよ。それが開花し始めたのが2011年以降だったと思ってます。
藤井 今は起点になりますからね。「お前らー!」って。
さやわか そうそう(笑)。
小島 この年代の女の子って、1週間でも違うんですよね。大きな公演をひとつやるだけでガラッと変わる。でも去年の中野サンプラザの段階では「これは無理だろうな」って思ったんです。去っていく早見さんを見て「この穴はデカすぎる。こんなんで続くのかな?」と。残されたメンバーはどうすんだろうって。
さやわか あの会場にいた人はみんな感じたと思いますよ。でもそこで『試練の七番勝負』をぶつけるんですね。
小島 僕は仕事が入ってたから『試練の七番勝負』は行けなかったんですけど、行った人がみんな「面白いよ!」って騒いでるんですよ。「何だ?」と。
さやわか あれって「できなさ」みたいなものをお客さんにも共有させてるでしょ。
藤井 「できなさ」であり、「Z」をみんなが受け入れる7日間ですよね。「週末ヒロインももいろクローバーZ!」って自己紹介のポーズも、7日間のうちに何度か変わってるんですよ。そうやって徐々にポーズが固まっていく過程も観客と共有してる。
さやわか 完成したものを見せるわけじゃないんですよね。
小島 アイドルに限らず未完成品ってなかなか表に出せないですよ。成長の過程を見守るって聞こえが良いけど、途中で離れてしまう人たちも出てきちゃうわけで。ももクロは、そういうドキュメンタリー性がすごいよね。
<3番目(今週末更新予定!)に続く>