全収録作品解説
文=足立守正
text by Morimasa Adachi
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#001-002
パンティストッキングのような空皮肉屋だけど侠気のある三上くんと、ピュアで力持ちのひろしくん。
この仲良しコンビに、いじめられっ子のアイちゃんが加わり、
世の不条理にささやかに挑むが、溜め息は白い呼気とともに冬空へ立ちのぼる。
不細工で切ない、古びることのない青春スラップスティック。(2003年ヤングジャンプ27・28号掲載)
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#003
平成の大飢饉予告編惜しくも終わらなかった世界。
今や立派にビデオ店員のバイトとして自活するひろしくん。
彼の結婚騒動に三上くんが乱入、
国粋主義者の組織も巻き込んでのスレスレなドタバタの巻。
果たしてひろしくんは結婚できるのか?
そして今度こそ世界は終わるのか?(『パンティストッキングのような空の下』のための描きおろし)
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#004
学級崩壊セックス、ドラッグ、ロックンロール。
全ての備品が揃っております、この楽しい学園天国。
そこに入った小さなヒビが、各所で広がる様を同時進行で追い、
すべてが集結してゆく。
真っ向から、言葉通りに「学級崩壊」を描いた、
うめざわしゅんの真面目さが光る。(2001年ヤングジャンプ増刊・漫革vol.22掲載)
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#005
渡辺くんのいる風景イジメで売春を強要されている少女・明美は、
ホテルで小学校の同級生・渡辺くんに再会する。
作者の当時の嗜好が集積し、それより何より、類のない渡辺くんという人間の表現。
本来「ダークファンタジー」ってのはこういう作品のことを言うんじゃないの。(2001年ヤングジャンプ増刊・漫革vol.26掲載)
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#006
いつ果てるとも知れぬ夏の日何だかラノベみたいなタイトルは、ブラッドベリのタイトルを戴いたとのことで、
ああブラッドベリも好きだったんだなラノベ。
という冗談はさておき、
SF要素無しでSFを描いたかのような不思議さは、夏のマジックか。
本書で唯一シトロンの香を放つ部分。(2002年ヤングジャンプ39号掲載)
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#007
未来世紀シブーヤ建物は朽ちて緑に覆われたあの街に、今も幻を求めて住み続ける男がいた。
大友克洋の破壊衝動と諸星大二郎のホラ話が交差したような佇まいに、
ああ、うめざわしゅんもニュー・ウェーヴの子供のひとりなんだと気づく。(2004年ビジネスジャンプ増刊・BJ魂雄飛増刊第20号掲載 「失われた時を求めて」を改題)
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#008
メンデル当時のQJ編集長の熱望に、かつて連作「ユートピアズ」で見せた、
アイデアを効かせた短篇の名手としての一面を披露。
それも、文字では表現できない、映像ではクリア過ぎる、
言葉と絵の間を読者に補填させる、
漫画にこそ似合いの、わずか4ページの掌編。(2006年クイック・ジャパンvol.68掲載)
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#009-010
朝まだき悪人ではないが善人でもない佐々木は、毎日ゴミ回収車を運転し、
毎日100円バーガーを8個食べる生活。
繰り返しの生活の中に、時々放り込まれる人間ドラマを、
まるでゴミのように見つめる冷静な視線。
作者の意地悪さとユーモアが最大に生かされた名品。(2007年増刊ヤングサンデー夏号掲載)
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#011-012
唯一者たち幼女への強制わいせつで補導された過去があり、
今でも密かにガチロリ道を生きる洋一。
フレンドリーなバイト先で、
イタいくらいに屈託のない幼なじみのルイちゃんに再会。
簡易で哲学的な会話の応酬が読者をも癒し、
ハッピーじゃないけど暖かい読後感を残す。(2014年月刊!スピリッツ5/1号掲載)
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