「俺はたった今刑務所から出てきたんだ」
私たちは「えっ」と発したまま固まった。
刑務所と監獄博物館のある街特有の冗談だろうか。
膝の上に載せた「かにめし」に手を付けられずにいた。
(中略)
別れ際、おじさんが「これやるよ、餞別だ」と言って渡してきたものを広げてみた。
それは首元や袖口の伸びきったスウェットの上下だった。
第34回講談社エッセイ賞受賞のエッセイストこだま、待望の新作は自身初となる紀行エッセイ。
どの場所でも期待を裏切らない出来事が起こり、そして見事に巻き込まれていくこだま。
笑いあり、涙あり、そしてドラマチックな展開に驚く内容も。
網走、夕張、京都などにとどまらず、病院や引っ越し、移動中のタクシーなど
「自分と縁のあった場所」について全20篇を収録。
スペシャル動画
本書について
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『縁もゆかりも
あったのだ』著: こだま
発売: 2021年4月23日(金)
仕様: 四六判、192ページ
ISBN: 978-4-7783-1750-8 -
収録話: 京都を知っていた(京都・南禅寺)/祈りを飛ばす人、回収する人(台湾)/東京は、はじまりの地(東京・品川)/メロンと郷愁(北海道・夕張)/監獄のある街で(北海道・網走)/母を知る旅(京都・嵐山)/私の藻岩山(北海道・札幌)/乗り合わせた縁(飛行機・タクシー)/事件は風呂場で起きる(某所)/浅草寺と奇縁(東京・浅草)/ブルーシートの息吹(自宅→新居)/ただ穏やかなホノルルの夜(ハワイ)/祖母の桜(病院)/熊の恋文(実家)/双葉荘の同窓会(学生時代の借家)/寄る辺のない旅(ロンドン、パリ、ローマ)/あの世の記憶(青森、秋田、岩手)/猫を乗せて(車)/凍える夜の鍋焼きうどん(ビジネスホテル)/ロフトとニジョージョー(京都)
お試し読み
『縁もゆかりもあったのだ』収録話をお読みいただけます。
お知らせ
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- 2021.5.19 フォトギャラリー公開&反響コメントを追加掲載
- こまださん撮り下ろし写真にコメントを添えて公開。また、蛭田亜紗子さん(作家)のレビューコメントを掲載しました。
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- 2021.5.7 書泉グランデに特大ポスターが登場!
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書泉グランデ(神保町)のショーウインドーに『縁もゆかりもあったのだ』特大ポスターを設置! お近くの方はぜひお立ち寄り下さい。掲載期間は1~2ヶ月程度を予定しています。
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- 2021.4.27 反響コメントを追加掲載しました
- Tai Tanさん(Dos Monos/ラッパー)、トミヤマユキコさん(ライター)、藤岡拓太郎さん(漫画家)のレビューコメントを掲載しました。
公式Twitter
著者プロフィール
こだま
エッセイスト。デビュー作は自身の夫婦関係を描いた私小説『夫のちんぽが入らない』。その後マンガ化、ドラマ化など展開。2作目となる『ここは、おしまいの地』で第34回講談社エッセイ賞受賞。2020年、続編の『いまだ、おしまいの地』を発売。
こちらも絶賛発売中!
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『ここは、
おしまいの地』第34回「講談社エッセイ賞」受賞作!
著: こだま
発売: 2018年1月25日(木)
仕様: 四六判、248ページ
ISBN: 978-4-7783-1612-9単行本を購入 Amazon.co.jp 電子書籍を購入 Amazon.co.jp
『ここは、おしまいの地』特設サイト Ohtabooks.com
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『いまだ、
おしまいの地』著: こだま
発売: 2020年9月2日(水)
仕様: 四六判、192ページ
ISBN: 978-4-7783-1722-5単行本を購入 Amazon.co.jp 電子書籍を購入 Amazon.co.jp
『いまだ、おしまいの地』特設サイト Ohtabooks.com
お問い合わせ
株式会社 太田出版
〒160-8571
東京都新宿区愛住町22 第3山田ビル4F
Fax: 03-3359-0040
メディアのみなさまへ
こだまさんへの取材依頼などのお問い合わせは
担当編集・続木(tsuzuki@ohtabooks.com)までご連絡ください。
書店員のみなさまへ
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レビュー
各方面から絶賛の嵐!
こだまさんが出かけて、見て、聞いて、感じるとき、すべてが「現場」になっている。ささやかだからこそ重大な一冊です。
劇団雌猫・ひらりさ(ライター・編集者)
こだまさんのエッセイは、可笑しさも悲しさも、たくましく包んでくれるみたいです。読んでいると、自分の思い出も温かくなっていきました。
大前粟生(作家)
命にまつわる記憶はいつも風景とセットである。本書に登場する景色を心のどこかで知っている気がするのはそのせいだ。こだまさんが描く景色の中で、私たちは繋がれる。
小野美由紀(作家)
醜さや愚かさ、悲しみを内包して生きる人々や場所への慈しみに満ちた、美しい本だった。一行一行が淡く光っているみたい。
寺地はるな(作家)
旅エッセイ。
クラスの余り者だけで構成された班を率いて東京を巡ることになった高校の修学旅行 。
出発するなり「何時に帰るんだ」と聞く父親と、対照的にあちこち見たがる母親と親子三人での旅行。
長年飼っていた猫が亡くなり、亡骸とともにかつて自分たちが一緒に住んでいた場所を回るドライブ。
こだまさんの文章は美しい。
「墓石に刻まれた 『ずっと大好き』『いつまでも一緒』の文字を玉砂利の隙間を這うアザミの葉が打ち消していく」という箇所を読んでて、この人の文章はずっと読んでいられるな、と思った。
快と不快。
おかしみと悲しみ。
生活の中のささやかな喜び。
くせのある家族。
身の回りにあるちょっとしたことの美しさ。
うまく生きられないことをユーモアと叙情で包む温かみ。
単色でない、いくつもの情感を折り合わせながらこの世界のどこかにある光景をこだまさんは描く。
この感じはどこかで読んだことがある…と考えてから、それが向田邦子の書く文章に似てるのだと気がついた。
現代の向田邦子なんだと思う。
伊野尾宏之(伊野尾書店・店長)
自身に起こる不運や珍事を、しめしめだなんて思わず、適切に戸惑う様子がめちゃくちゃ笑える。紀行文特有の、場所と人の巡り合いに過剰に意味を見出す甘やげな雰囲気を頑として出さないのも気持ちいい。蟹とメロンにだけ高揚する夫婦、会ったこともないのにもう好き。
Tai Tan(Dos Monos/ラッパー)
観光ガイドとしてはまったく役に立たない。
なのに、気づくと「旅はいいなあ」と思っている。そこが好きだ。
トミヤマユキコ(ライター)
※クリックで拡大してお読み下さい。
藤岡拓太郎(漫画家)
こだまさんの旅の思い出は、きれいな便箋に綴られた手紙のように、あたたかく自然に胸に入ってくる。そして忘れていた景色や顔を呼び起こして、また行けたら、会えたら、とこれからの楽しみを見せてくれる。
蛭田亜紗子(作家)