クイック・ジャパン編集部ブログ
太田出版発行の雑誌「クイック・ジャパン」の最新情報や編集部の様子をお伝えしていきます。
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QuickJapan77号Perfume特集おまけ座談会 1
2008.4.16
クイック・ジャパン77号Perfume特集おまけ座談会
夢はまだまだ終わらない!
――Let's talk about Perfume&GAME! 1
先週末予告した「Perfume座談会」が完成しました。
74号のPerfume特集からお世話になっているライターさやわか氏、現在発売中の77号で初めてPerfumeの記事をお願いした、QJではおなじみのライター吉田大助氏、そして本誌編集長・藤井直樹によるPerfume座談会です。過去の記事を振り返りつつ、Perfumeについて、中田ヤスタカについて、そして新アルバム『GAME』について語った2時間。はたしてどんな話になりますやら。まずは第一章をお楽しみください。
◆第一章 QuickJapan74号とは何だったのか!?
■「74号は休刊」ってとこまで覚悟しました
吉田 最新号はPerfumeの特集第3弾として、メンバー3人の、個別のロングインタビューを3本掲載していますが、その前にまずは特集第1弾となった74号(2007年10月10日発売)の話をしませんか? というのも僕は77号からの参加なので、ぜひPerfumeを取り上げた経緯をお伺いしたいなと。Perfumeを特集、しかも表紙に持ってくるって、今となっては当たり前みたいな雰囲気かも知れないですけど、当時の状況を考えたらかなりあり得ない話ですから。
藤井 ありえないというか、無茶ですけどね(笑)。
さやわか 表紙にするのが「無茶」っていうのは、いまPerfumeを人気グループだと認識している人とか、あるいはずっとPerfumeのファンだった人には意外だと思いますよ。 「当時の状況」って言ってもまだ1年も経ってないんですが、それだけ半年程度でPerfumeを取り巻く状況は劇的に変わったんです。
吉田 あの号のさやわかさんの記事のリード文で、<「ポリリズム」のシングルがオリコンのデイリーチャート4位になった記念すべき日にインタビュー>とありますよね。実際に発売日の次の日にインタビューをしているわけで、となると特集や表紙の企画が動き出した時はまだ「ポリリズム」が出てなかったわけでしょう。
藤井 出てなかったです。そもそも「ポリリズム」をちゃんと聴けてない状態で始まった企画でしたから。何十秒かサビだけ、ホームページでちらっと発表されてるくらいだったんじゃないかな。「近いうちにシングルが出るらしい」って、前情報はそれくらい。
吉田 音も聴いてなかったんですか(笑)。チャート的にいうと、前のCDはウィークリー31位ですから、これで表紙っていうのはやっぱりかなり無茶ですよ。おまけに「ポリリズム」発売の1ヵ月後に雑誌で特集する野蛮さ(笑)。
さやわか かなり思い切ってますよね。しかもPerfumeは「アイドル」っていうカギカッコ付きで語られてる存在なわけで、ベタにアキバ系というかオタクっぽさみたいな部分を面白がるんじゃなく、アイドルのことを普通に語るのはけっこう難しい状況でしたから。もし「Perfumeはいいんですよ」っていうところに持って行けたとしても、「それって、ただプロデューサーの中田ヤスタカがすごいって話じゃないの?」って見え方になるかもしれなくて、それもまたPerfumeの良さを伝えるというのとは違うし。
藤井 だから社内的にも「なんだオマエ、そんなヤマ張る奴だったっけ?」みたいな感じでしたよ。PerfumeってあのPerfumeでしょ? みたいな。別にバカにしてるわけじゃなくて、当時は声をかければすぐ出てくれる身近な存在でしたから、そのPerfumeをなぜ表紙に? っていうクエスチョンマークが、そりゃもう周囲にありありと(笑)。
吉田 じゃあなんでやったんだって話ですよね。なんのタイミングがあったんだっていう。いや、タイミングはあったにしても、なぜ表紙になれるんだって(笑)。
藤井 まあ......あまり内輪の事情は話したくないんですけど、あの時はいろいろあったんですよ。Perfumeの特集を組んだ74号は、僕が編集長になってリニューアルした2号目で、編集部員の異動とかがあって実質的に一人で作ってたんです。で、最初はちょっと手のかかる別の企画を表紙と第1特集で進めて、第2特集も前から温めていた企画を進めてた。ところが先方とのやりとりが進むうちに、どうも2つともタイミング的に難しいだろうという話になって。
吉田 それっていつごろの話です?
藤井 ダメって分かったのが8月の下旬だったかな。QJは隔月で出してる雑誌だから、この時点で10月上旬には発売しなきゃいけないわけです。それなのに特集で何をやるか決まってなかった。
吉田 ヤバいですね~。
藤井 マジでヤバいっすよ(笑)。もちろんネタはいろいろあったけど、どれも特集するほどじゃなかったし、やっぱり雑誌の「流れ」ってあるじゃないですか。73号では『くりぃむナントカ』(テレビ朝日)を特集したんですけど、しばらくテレビを取り上げるつもりはなかったし、同じ73号で特集した銀杏BOYZは3号連続という形で74号にも掲載されるわけです。そういった全体の流れを考えると、なかなか代案が見つからなかった。
吉田 スケジュールもキツいですしね。
藤井 そうなんです。仮に良い特集が浮かんでも、相手と交渉してOKをもらわなきゃいけないから。ただでさえ予定した企画が消えてるのに、そこで次も「ダメ」って言われたら万事休すでしょ。そんなこともあって悩んで......最終的には「74号は休刊」ってとこまで覚悟しましたね。もう出すのやめようと本気で思いました。
さやわか 休刊ですか! まさかそんなことになってたとは知らなかった。
■まったく売れないんだったら、自分はもう単純に「見る目が無いヤツ」なんだろう
藤井 でもそんな状況で、ずっと心に引っかかってたものがあって、それがPerfumeだったんですよ。というのも70号(2007年2月10日発売)でのインタビューはもちろん、同じ70号の「Next Quick Japanese100」って特集で中田ヤスタカさんをピックアップしたり、QJとしてはずっと気にして追いかけてたから。
吉田 ああ、確かにそうでしたね。
藤井 ただ、一方ではPerfumeで特集を組むことへのためらいもあって。僕の周りでもライターやミュージシャン、DJとかの間で「Perfumeっていいね」という声はあったんですけど、やっぱり表紙になるわけですから、ぶっちゃけ言えば「Perfumeを表紙にするのか?」ってハードルがあるんです。当時のPerfumeはそういう存在だったんですよ。
吉田 でも、最終的にはやろうと思ったんでしょ?
藤井 さんざん悩みましたけどね。で、Perfumeのアルバム『Complete Best』を改めて聴いたら、「これどう考えてもやっぱりすげーイイじゃん」って思った。彼女たちのキャラクターは面白いし、中田さんのサウンドプロデュースは最高だし、聴けば聴くほどね、これはとんでもないと。もしこれを特集して表紙に持ってきて、それで全く売れないんだったら、自分はもう単純に「見る目が無いヤツ」なんだろうとか、そんなことを一晩中考えながら、結局はPerfume を特集するって決めたんです。
さやわか 特集として始動するまでにそんなことになってたんですか。
藤井 で、特集が決まってないのは社内に知れ渡ってて、みんな「QJは大丈夫か?」って心配してたから、次の日の朝イチで社長つかまえて「Perfumeでいきます」って言ったんですよ。そしたら社長が驚いて幹部を招集して(笑)。そこで改めて自分が考えてることを言ったら、みんな「話はわかった、お前の好きなようにやれ」と。それで作ったのがあの74号なんです。
吉田 ちょっとした『プロジェクトX』だ(笑)。
藤井 いやいやいや(笑)。だから自分の中では確信があってPerfumeを特集したわけじゃなく、いろんな事情が重なって追い詰められて、どうしようかってときに手元にあったカードがPerfumeで、そのカードがとんでもなく魅力的だったから、これにすべてをかけてやろうと思っただけ。ウチは部数はもとよりくだらない雑誌を作ったら編集長でも降格、下手をすればクビですから。どんな雑誌を作ってもいいんだけど、「QJはサブカル雑誌だからさあ、こんなもんでいいんじゃね」なんて言い訳は絶対に通用しないんですよ。そんな状況で「これで行く!」って思う魅力がPerfumeに間違いなくあったんですね。
さやわか 74号が売れたと聞いた時は特別嬉しかったんじゃないですか? だって、一度は休刊まで覚悟したんですから。
藤井 もちろん74号が売れたのも嬉しかったけど、直後にPerfumeがブレイクしたっていうのが嬉しかったですね。たぶん世間的には「ポリリズム」が売れた相乗効果でQJが売れてよかったね、って流れだと思うんですよ。別にそれはそれでいいんですけど、個人的には「そんな愉快な話じゃねえぞ」って(笑)。
さやわか いや、それはそうです(笑)。
藤井 まあ今となれば特集してよかったなと思いますね。他媒体から「まさかPerfumeを表紙にするなんて」と言われたのも嬉しかったし、会社の幹部たちから「やったじゃん」って言われたのも妙に嬉しかったというか(笑)。
吉田 いい会社じゃないですか(笑)。
さやわか いい話だ(笑)。
藤井 そこまでいい話じゃないでしょ、これ(笑)。まあ、そんな感じで今日はね、みんなで楽しくお話ができたらいいなと思うわけですよ、はい。
吉田 これだけ熱く語っておいて(笑)。 でも、Perfumeを語る上で日付って大事だなって思いますね。74号の記事にも日付がついてましたけど、日付を無視して音源だけで語ると面白味が半減しちゃうというか。いや、減るというよりも、日付を込みで楽しむことで、加算されるという感じかな。ポップミュージックって、歌ってる人の状況とか、オーディエンスの状況も含めたトータルの面白さだと思うので。だから今回の77号も、このタイミングで、3人個別インタビューをやる意味というのもマンマンにあるわけですよね。そのあたりどうですか、編集長としては。
■1歩先だとたぶん早すぎる
藤井 さっきさやわかさんもおっしゃった通り、Perfumeの2007年秋からの半年間って目まぐるしくて、あり得ないくらいのスピードで移り変わってきましたからね。しかも、QJは今回で3回目の記事だから、前2回分を踏まえた上で、という部分は意識しました。雑誌だけじゃなくテレビも含めて、他とは違うことやらないと意味がないというか。
さやわか 74号の特集はもちろんですけど、マネージャーの山本史朗(もっさん)さんや振付師のMIKIKOさん、スタイリストの研さんというPerfumeの鍵となる部分を担当するスタッフに注目した75号の対談企画も、他の本より1歩か......半歩くらい早かったイメージがありますね。
吉田 その半歩っていうのがよかったんですよ。1歩だとたぶん早すぎる。
さやわか 今回の取材の後で山本さんが、他誌のインタビューではあまりニューアルバムの話ができない、楽曲の話にまで至らないっておっしゃっていたと聞いて。確かに他誌を読んでみると、どうしても「下積み、大変でしたね」という話がメインになってる。
吉田 このタイミングで、過去を振り返らずにアルバムのことだけをちゃんと語るのって難しいでしょう。アルバムのことはプラスアルファ的な扱いになる。
藤井 でもね、別にそれ自体は間違ったことではないし、各媒体が時間軸をどう切り取るかは画一化されてない方が面白いですよ。ただ、うちは典型的な「サブカル雑誌」って感じから、いまはメジャーなものも扱うようになってますけど、「今と先」のことを記録するってスタンスは崩したくないし、対象に対する自分の「こだわり」は捨てたくない。そういう意味でもPerfumeの取り上げ方については一貫していますね。
吉田 Perfumeを記事にした最初のきっかけは何だったんですか? 初めて登場した70号の見開き記事は、『Fan Service [bitter]』のリリース・インタビューでしたよね。
さやわか ばるぼらさんがインタビューした記事だ。
藤井 あれは確かレコード会社さんとの繋がりからじゃなかったかなあ。徳間ジャパンさんはPerfumeに限らず、QJとハマりそうなアーティストをいろいろと提案してくれていて、その中のひとつとしてPerfumeがあった。最初は雑誌としての彩りみたいな感じだったんですけど、一部で熱狂的に支持されてるのは分かってたし、ずっと気にはなっていましたから「じゃあやりましょう」って。
吉田 反響はどうでした?
藤井 あのサイズの記事にしてはすごくありましたよ。
さやわか その反響が74号の特集に結びついたわけではないんですか?
藤井 まったくないです。だって、さやわかさんと最初の打ち合わせで話したことが、僕にとって本当のスタートだったというか、あの打ち合わせのことは克明に覚えているんですよ。経営陣に「お前の好きなようにやれ」と言われた直後の打ち合わせ(笑)。
さやわか あの時は、僕もどうやって話をしたらいいのかなと、いろいろ必死で考えていたんです。もともと僕はPerfumeがずっと前から本当に好きで、ちょっと他人事じゃないくらい思い入れていただけに、愛情で突っ走った記事をやりたいように見られたら嫌だなあと。どれだけ僕が力説したところで、「そりゃキミはアイドルとか好きだろうし、Perfumeもいいんだろうけどさ」みたいな感じになるかもしれないじゃないですか。でも、藤井さんとああでもないこうでもないと話をしているうちに、次第に「あ、これはいけるかも」ってなりましたよね。
藤井 なりましたね。さっき言ったように僕自身も確信があったわけでは決してなかったんですよ。Perfumeでやると決めたし、音がいいのは分かってるんだけど、どういう風に打ち出していけばいいのか言葉になってない段階。だから自分でも一刻も早く言葉にせねばなあと思いながら、さやわかさんに初めてお会いして。その時にした話がね、すごいストーン! って腑に落ちた。「あ、これじゃん」っていう。
さやわか 藤井さんが最後に「できたっぽいね」って言って、僕も「できたっぽいですね」って言ったんですよ。あのときは素直に「これ、できるわ」って思いました。
藤井 「アイドル」っていう言葉に対して僕が感じる違和感は何なんだろうと思ってたんですよ。自分がいま言われている「アイドル」に乗れないのはなぜなんだろうって。それが話していく中で、さやわかさんが、「アイドルっていうのは本来はジャンルじゃなくて、好きなら好きって言える存在のことだと思うんですよ」と言ったんです。で、その存在に今なれるのはPerfumeなんじゃないかっていうのを打ち出してくれて。74号の特集リード文に書いてあることそのまんまですよ。それが見えてからは、特集の仕上がりまでまったく軸がブレなかったんです。
さやわか 打ち合わせで藤井さんに「今話したことをそのまま書けばいける」って言われて。新生QJのキャッチコピー「CAUSE TO BE NOW HERE.」(笑)。
藤井 そうそうそう。自分の興味の中心にあるのは常に「今ここにある理由」だから、その文脈でさやわかさんが語ってくれたから、「うわ、まさにそれじゃん」って。これで失敗したらもういいやって思うぐらいハマった気がしましたね。それからは、売れるかどうかドキドキしてたというよりも、ただ良い特集が作れそうな予感にワクワクしてましたよ。
さやわか 僕もほんと、喋ってるうちに思いついたことだったんです。藤井さんと喋ってるうちに、「あ、これだ」って。それまで、どれだけPerfumeは素晴らしいと語っても「どうせアイドルオタクが聴いて喜んでる音楽だろう」って話が終わっちゃってたし、オタクの人も「自分たちは気持ち悪いオタクだし、アイドルソングなんて世の中に認められない馬鹿な音楽なんだ」みたいに変な開き直り方をしてるところがあって、アイドルの価値っていうのを誰もが同じフィールドで語りようがなかった。そういう状況で、どうやってPerfumeを見せていったらいいんだろう、世の中に向けてどういう言葉を作ればいいのかなあって思ってたんです。
■置かれている状況とメディアとの温度差がすごかった
藤井 僕みたいに「アイドル」に対しての特別な知識も共感も持ってこなかった人間に対してPerfumeの良さをどうやったら届けられるのか?」っていう命題にズバッと答えが出たんですよ。僕の感じてる、現状の「アイドル」というものに対して「なんかおかしくねえ?」っていう違和感も分かった上で、さやわかさんは喋ってくれたから。
さやわか それを分かってもらえたことが大きいんですけどね。一番覚えてるのは、今パッケージ化されてる「アイドル」じゃなくても、昔は誰かにとって、例えばデリック・メイとかジェフ・ミルズがアイドルだったじゃないですかって......。
藤井 ジェフ・ミルズね! いや、僕の中でジェフ・ミルズはアイドルだったんですよ。なるほど、あっそれか、って(笑)。
さやわか ビートルズですら「4人はアイドル」ですからね。だから今、「アイドル」を愛せないのと同様に、「アーティスト」に対してそういう熱狂的な聴き方ができない状態になってるのはおかしいし、アイドルという言葉をもう一回本来の意味で使える存在として、今のPerfumeは見ることができるんじゃないかっていうようなことを言って、自分で言いながら「あ、そうなんだ」って。
藤井 留保条件というか、こういう角度で見たらこう愛せるんだよ、とか限定するやり方じゃないんですよ。好きなら好きってことでいいでしょ、それが本来の「アイドル」って言葉の意味でしょ、っていうのを聞かされました。
さやわか 伝え方は難しいんですけどね。「アイドルだけどいいんだよ」っていうのとも違うし、「オシャレな人がアイドルをプロデュースしたんだよ」っていうのとも違う。
藤井 「アイドルだけど」って言い方だと、「アイドル」の文脈が色々出てきてる今の世の中だと難しいし、やりたいこととずれてしまいますからね。
吉田 なるほど。そこで特集をやるというのは、相当な冒険とはいえありうるかもしれないですね。でも繰り返しになりますが、表紙ですよ?
藤井 可能だったとは思うんですよ、こういう追い込まれた編集長がいる雑誌じゃなくても(笑)。ただ、事実としてそれまで一度も表紙を飾ってこなかったというのは重要な意味を持っていると思う。つまり、それまでPerfumeが表紙として出てこなかったというのは、彼女たちがカワイイとか人気があるとか、音楽が素晴らしいとかって話に関係なく、世間的には表紙になる条件を満たしてなかったということなんです。
さやわか Perfumeはメディアとファンの温度差がすごかったんですよ。明らかに波は来ていたんです。でも、ライブにしろネットにしろすごく盛り上がってるにも関わらず、なかなかマスメディアだとか一般の人たちにまでは届いていかなかった。だから74号の時は、どうすればライブやネットでの盛り上がりが一般の人たちに届くのか、そのことばっかり考えてました。
藤井 きっとPerfumeの所属事務所にしても、一部では確かに支持されているのは分かっていて、「じゃあこれをさらに広げるには何をすればいいのか」を探っている状態だったと思います。74号を出した後に、さやわかさんがご自身のブログで、「音がカッコイイとか言っても届かないのは十分に分かってるから、それを受容する側の状況を打ち出すべきだと思っていて、編集部からのオーダーがそれだったから、すごくマッチした」みたいなことを書いてたじゃないですか。やっぱりあの時はそう打ち出して正解でしたよ。
さやわか 今は「かっこいい/悪いということは個々の価値観に過ぎない」みたいな感じで相対化する傾向があって、だから単に「音がすごいんです!」とか、へたすりゃ「これはアイドルとして面白いんですよ!」って言っても相手に届かない。まずは誰かが何かを熱烈に好いているという状態に、何とか注目してもらうところから始めなきゃいけないんだと思うんです。
吉田 さっきの日付の問題とも絡むんですけど、今もし1発目のPerfume特集を作るとしたら、言葉の作り方も違ったんじゃないかって気がするんですよ。もし今やるとしたら「アイドル」っていう言葉を立てて押し出すのはまた違っただろうし、この半年の時間の経過によってPerfumeの状況は全然変わったわけだし。
藤井 確かに、もし今が1発目だったら全然違うでしょうね。今だったら、もっと中田さんが前に出る作りになるのかなと思います。Perfumeもアイドルというよりもアーティスト的な捉え方になったんじゃないかな。
吉田 『GAME』が出来ちゃいましたからね。
さやわか もう、このクオリティですから。本当にこれは、とにかくご一聴いただかないことには話しようがないのが歯がゆいですね。
藤井 74号の時点と『GAME』のクオリティが分かってる今の時点とでは、全然違うんですよ。『GAME』はとにかくすごい。じゃあ、そろそろ今の時点である77号の話をしましょうか(笑)。