『水色の部屋』上巻刊行記念特別対談　page3/6

『水色の部屋』をめぐる話（3）
「向井秀徳……です（笑）」

では主要登場人物4名について訊いていきたいと思います。

ゴトウユキコ 正文が好き。ああいうナヨっちい人が好きです。河野は、あんまりちゃんと組み立ててないです。

担当Ｓ 一番苦労しましたよね、キャラ作りで。

ゴトウユキコ 今まで描いたことがないタイプの人だったので、河野が一番大変だった。

サホ

三吉とサホはどうですか？

ゴトウユキコ 三吉はよくある女の子で、4人の中で一番普通。サホは、ロリババアが描きたかった。ロリババア好きなんです。××××（大物歌手）ちゃんとか。××（大物女優）さんとか。

twitterでは「永作さん」がモデルって書かれてましたね。

ゴトウユキコ 永作博美さん、好きです。

ふみふみこ 私も永作さん好きです。あ、サホのモデルなんですか？

ゴトウユキコ うん。

担当Ｓ それは書いて大丈夫なんですか？

ゴトウユキコ ぜんぜんいいです。

ふみふみこ 映像化して永作さんがやってくれたら超いいですね。

「配役をするなら誰ですか？」っていう質問も考えてたんですけれど。

ゴトウユキコ みんなモデルがいる。

ふみふみこ 河野は『あまちゃん』に出てた福士蒼汰君とかいいと思うんですけど。

資料（クリックで拡大）

ゴトウユキコ （バッグをあさりながら）今日は机の目の前にいつも貼ってる資料をもってきました。

担当Ｓ 正文って向井さんじゃないですよね……？

ゴトウユキコ 若いときの向井秀徳……です（笑）。

担当Ｓ やっぱり。

ふみふみこ 向井秀徳ってどういう人ですか？

「ナンバーガール」「ZAZEN BOYS」のフロントマンですよ。

ふみふみこ ああ～！

担当Ｓ 絶対そうだと思ってた！

三吉京子

ゴトウユキコ 三吉は二階堂ふみさん。元気な女の子。河野はここに写真があるんですけど、ナンバーガールのナカケンさん（中尾憲太郎）ってドラムの人。

ドラム？　アヒト・イナザワじゃなくて？

ゴトウユキコ アヒトじゃない。ベースだ。あと『リリィ・シュシュのすべて』（岩井俊二監督）に出ていた、目がおっきい人。

資料の中に板尾創路さんの写真があるのはどうしてなんですか？

渡辺

ゴトウユキコ それは渡辺っていうおじさんのキャラです。

ふみふみこ おもしろい。

衝撃の設定が出てきましたね。ところでゴトウさん「正文が好き」っておっしゃってましたけど、正文はサホが犯られるのをただ見ているだけの男じゃないですか。レイプを止めなかったのは何故なんですか？

ゴトウユキコ それはやっぱりお母さんが好きでも、自分がお母さんとセックスすることはできないから、それ（河野によるレイプ）を見てオナニーして満足しているっていう。要はマザコンだから、それだけです。でも自分のこと好きな人が犯されていて、「やめろー！！」って止めに行ったら、すごい漫画的になってしまうじゃないですか。実際は何もできないと思うんですよ。

でもオナニーまでするんですか？

ゴトウユキコ フフフ……（答えず）。

あれはなんでオナニーしているんですか？

ゴトウユキコ 好きだからです。

担当Ｓ あの状況でオナニーするって妙に説得力ありますよね。

ゴトウユキコ でも自分だったら、見てるしかない。止められないと思う。正文は結局私と一緒で、何からも逃げている人間で、ズルい人間だから、好きな人がレイプされても何もいわないっていう。そういう人間なんです。

ふみふみこ 自分なら止めます！　合意の上だったらいいですけど。ただ、自分が正文だったら止めないだろうと思います。

ふみさんは正文が全く動けずにオナニーしているのを見てどう思いましたか？

ふみふみこ なんか、一番しっくり来るのはもしかしたら「見てるだけ」かもしれないですけど、やっぱ、話とか画的にオナニーしてるほうが盛り上がる（笑）。呆然として見尽くしちゃうみたいなことよりは、物語として。それで「なに見てんだよ」ってあそこで河野君がいうっていうのは、衝撃だった。『水色の部屋』超おもしろいですよね。今までの作品も勿論大好きだったんですけど、「あ、これやだ、なんか知ってる」みたいな気持ちを『水色の部屋』からは感じるんです。それは今までゴトウさんが描いてこなかったことだったし、そしてすごくおもしろいっていう。

『水色の部屋』は漫画でリアリティみたいなのを描くことをしていると思うんですが、ふみさんはあまりそういう方向には振らないですよね。

ふみふみこ 私は振らないです。ていうか振れないんですよ。描けるんだったら描きたいってすごい思うし、そこが自分の突破できない部分だなって感じます。私が描いているものはどこまで経っても表層でしかないというか。上塗りでしかないなって思うんですけど、ゴトウさんって隣で会話しているような感じで、あることを描いちゃうんですよね。ゴトウさんの漫画ってその場にありそうなことというか、『Ｒ－中学生』もあそこまでエンタメなのに、でも「なんかいそう」みたいな感じだったりとかするんですけど、それが『水色の部屋』ではよりもっと気持ち悪い感じに進化していて、エンタメ色はなくなっているとは思いますけど、昔の邦画っぽい感じになってる。最終的にどうなるのかは下巻を読まないとわからないですけれども。でも絶対好きだと思います。

では『水色の部屋』についてはこのぐらいにして、次はパーソナルなことについて訊かせてください。