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男性は絶対に描かないキツさがある
- 「2週間のアバンチュール」巻き毛の先生
――『2週間のアバンチュール』は短編集ですが、これはどうやって始まったんでしょうか。
M角 元から描きためていたものがあったんですよね。
T中 一発目の「2週間のアバンチュール -南仏-」は「エロティクス」でやったものですよね。
中村 そうそう。さすがにこれはキツいよってシーンは「エロティクス」で。
T中 。今、読み直しても「キッツいなあ、こんなキツいの描いてたんだ」と思って。
中村 「僕、やっぱ子どもいるからさあ」って(笑)。
一同 (笑)。
T中 そんな話した?
中村 「おしっこ漏らしてるところはちょっと隠して、頭で」って。でもほら、この時は「エロティクス」で描いてる人たちがすごかったから、負けまいとして。
T中 町田ひらくさんとか駕籠真太郎さんとか。
中村 町野変丸さんもいて。その中だと別にそんなにと思って。
T中 たしかにね。でも女性が描くキツさがあるんですよ。男性はこれは描かない。絶対に描かないだろうという。
一同 ああー。
T中 女の子の嫌なところを描いてるじゃん。男は女の子のこんな嫌なところを描かないので。なんであんな女の子のキッツいところを描こうと思ったの?
中村 たしか、コロニー(林間学校)っていうのがあるのを新聞で読んで。多分、悪いやつが一人ぐらいいるだろうと。
一同 (笑)。
――悪いやつっていうのは先生ですか?
中村 そう、この先生。この巻き毛がきっかけでJは巻き毛だから。
U村 そうだったんですね!「巻き毛描くのが楽しい!」ってわかってしまって?
中村 そうそう。くるくるした頭のキャラを出そうと思って。
一同 (笑)。
明日美子さん争奪戦の歴史
――『2週間のアバンチュール』はM角さんが担当だったんですよね。
M角 そうですね。『ばら頬』の後半くらいから担当が変わって。
――少し話が戻るんですが、M角さんの最初の明日美子さん体験はいつですか?
M角 太田に入ってですね。マンガ賞の準備で過去作品をバーっと読んだ時に、「なんかすごい人がいる」って。「コーヒー砂糖入り恋する窓辺」を読んで、この歳で、投稿作でこんな人がいるんだってすごくびっくりした記憶がある。
――T中さんもU村さんもM角さんも、投稿作が本当に最初の出会いなんですね。
中村 U村さんからM角さんに担当が変わるって聞いて、すごい悲しい気持ちになったんですけど、その打ち合わせを終えて喫茶店から出た時に、U村さんのコートがくちゃくちゃで。
M角 覚えてます(笑)。
U村 椅子の背に掛けてたコートをお尻で踏んづけていて。
中村 「あああ」と思って、悲しい気持ちとかがいろいろ吹っ飛んじゃった。
一同 (笑)。
U村 引き継ぎについてはちょっと、初めて言う話があって。
中村 ほうほう。
U村 私もすっごい悲しくて、明日美子さんの担当をずっとやりたかったんですけど。私、初めてマンガ編集者になって、半年くらい経った時にT中さんに「U村さんもそろそろ担当をつけないとね、誰やりたいの」って言われて、「明日美子さんやりたい」って言ったら「ダメ」って。
一同 (笑)。
U村 「え、なんで聞いたの?」と思って(笑)。恨んでいるわけじゃないですよ。(明日美子さんは)秘蔵っ子だったから。
中村 いえいえ。
T中 どの辺の時期だったかよく覚えてないんだけど、いつ?
U村 『コペルニクス』の時。
T中 ああ、『コペルニクス』の途中はやっぱり無理かなあ。
U村 今ならわかります。でも当時は、M角さんの担当を決める時は、好きな作家さんをやらせてあげようと。
中村 私と安田弘之さんは新人編集者にあてやすい作家っていうカテゴリだったんですよね。激昂したりしないし、電話に出るし、締め切りを守るから。
一同 守ります。
中村 行儀のいい作家。ちょっと二人しか思いつかない(笑)
一同 (笑)。
T中 最初のころって僕、中村さんに赤ペン先生って言われてたじゃん。
中村 そうかもしれない。
T中 ネームがくるとだいたい町田のカフェ・グレで修正の打ち合わせして、半日とかやってた。『コペルニクス』がまだこれからって時だったから、それはさすがにまだ担当変えられないよね。
各編集者のベストエピソードorベストキャラクター
――これで8冊全部のお話を伺えました。新装版のカバーイラストの色校が出たので、今日皆さんに見てもらおうと思って持ってきたんです。
- 新装版「中村明日美子コレクション」シリーズ カバーデザイン
U村 わー!!!すごーい!
M角 きれい!
――8冊分のカバーイラストがつながっているんですよ。この範囲が『コペルニクス』、この範囲が『鶏肉倶楽部』ってなってます。
T中 これ、横長の紙1枚に描いたの?
中村 もちろんバラバラに描いて組み合わせました。紙がないから。
U村 私はここだな。(モーガンがいる『J』のあたりを指す)
中村 「私は」って何?(笑)
M角 欲しいんですか?(笑)
U村 全部欲しい! でもモーガンが好き。
T中 今回ここの、『コペルニクス』の座長が真ん中で切れてるのが格好よくて良かったね。
中村 この辺が一番密度が高い。
――T中さんにとって思い入れのあるキャラとかエピソードはありますか?
T中 なんだろうなあ。物語全体で見てるから、どれがっていうのはないな。ある作家さんに言われたんだけど、「T中さんには萌えがわからないから」って。
――では、作っていてエピソードとしてすごく印象に残っているところはありますか?
- 「Jの総て 3」レオ
T中 そういう意味だとレオかな。ジャグリングの。
M角 たしかに『鶏肉倶楽部』にも番外編が入っていて、膨らんだキャラクターですよね。
中村 レオの系譜ってあるんだよね。レオとアーサーは同じ。アーサーから原先生。
U村 わかります!
中村 ちょっと外側から見てるみたいなキャラクター。
T中 『コペルニクス』は群像劇だから、皆等しく役回りを持ってる。オオナギのモデルは大竹まことだったっけ?
一同 (笑)。
T中 好きだもんね。
中村 そうですね。シティボーイズ、すごい好き。