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第8章 絶望から生まれる希望
―――ところで、局内での伊藤さんの評価ってどうなんですか?
伊藤 えーと……、どうなんだろう。
―――いま手がけている番組だけでもかなりの数ですよね。
伊藤 『モヤさま』と『やりすぎ』があって、あとは『アリケン』『ウェルカムTV』『音楽ば~か』『FUJIWARAのありがたいと思えッ!』と、BSジャパンで『おぎやはぎのそこそこスターゴルフ』をやってます。レギュラーはその7本ですね。
―――それってどう考えても会社に期待されてるじゃないですか(笑)。
伊藤 まったく感じない(笑)。上司からは「お前がそれを言ったら贅沢だよ」って言われますけどね。でも追い風とか感じた経験がないんです。おまけに仲の良い後輩からは「若手の社員はみんな伊藤さんを怖がってる」と言われたりして(笑)。1回も喋ったことがない社員もたくさんいるから、距離のある感じになっちゃってるらしいですね。上からも横からも下からも評価されてないなんて、もしかして会社と接点を持ってないのかなと思ったり。
―――以前、会社から金一封をもらってましたよね? クイック・ジャパンで『やりすぎ』を特集したとき(69号)、読者プレゼントでのし袋をいただきました。
伊藤 ありましたね。でも金一封なんていらないんですよ。いや、ないよりはあったほうがいいか(笑)。なんて言うのかな……被害者意識が強いのかもしれないですけど、元々が深夜でほったらかしにされてたじゃないですか。「アホなことばっかやってんじゃねえ」みたいな。「あんなもん明日で終わりだ」みたいなこと言われて(笑)。
―――確かにそういうエピソードばかりですよね(笑)
伊藤 いま僕がやってる番組はどれも極端にスタッフが少ないんです。前から言ってるんですけど、『やりすぎ』とか『モヤさま』は演者さんが立ってる企画だから、バラエティ番組をやりたい人はここでADから始めたほうがいいよと。でも入れてくれない。テレビ東京は小さな局なんだから、協力体制をパッと作れないものかなと思うんだけど。
―――結局、組織って誰かが決断しなきゃ動かないと思うんですけど、決断にはリスクが伴うからみんな二の足を踏んでしまうんでしょうね。そして、これまでと違ったことをやろうとしてもサポートするシステムがないから、前に進もうとする人がドン・キホーテみたいになってしまう。
伊藤 やっぱり、「いいじゃないか、やろうぜ!」って声が必要ですよね。『モヤさま』の移動だって、視聴者のみなさんだけでなく局内でも疑問視する意見はあります。当たり前ですよね、普通に考えればありえないやり方ですから。でも僕にすればいつも通りなんです。みんなの判断が常に正しいんだったら、誰もこんなに苦労しないわけですから。そうやってこの絶望的な状況を逆手にとれば、まだやってないことが見えてくるはずです。テレビが厳しい状況にあるんだったら、誰もが疑問に思うようなことをやってこそ、初めて視聴者に届くんじゃないかと思います。
―――だから『モヤさま』はゴールデンタイムに移動するんだと。
伊藤 いま木曜日の深夜に観ていただいている人たちには、本当に申し訳ないと思ってますけどね。移動したら観ないって人がいるかもしれません。ただ僕は『モヤさま』をより多くの人に観てもらいし、それがテレビ東京やテレビ全体を考えた自分なりの選択です。僕はプロデューサーとして、この番組にとって常にベストな道を進みますから、これまでと同じような愛し方をしてくれたら嬉しいです。
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