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第2章 悩み続けた年末年始
―――『モヤさま』がゴールデンタイムに移動するのは、編成部長の方針としてほぼ決まったとはいえ、伊藤さんのなかではすぐに割り切れるもんじゃないですよね?
伊藤 うん。結論を出せないまま年を越しちゃいましたね。関係各所の調整があるんですけど、最終的に僕の判断待ちという変な形になってしまって。やっぱり『モヤさま』は、“テレビ東京”の“深夜”っていう、テレビ業界の隅っこのそのまた隅っこでやるのに相応しい番組なんです。楽をしているわけじゃないんですけど、どこにでもあるような街をさまぁ~ずさんが歩いて、適当に撮ってまとめちゃう(笑)。僕自身もさまぁ~ずさんといまのように、付かず離れず仕事しているのがすごくいいなと思っていて、自分の中では心のオアシス的なところもあるんですよ。
―――それはよくわかります。
伊藤 なんとなくなんですけど、さまぁ~ずさんが白髪の混じる50歳くらい、番組としては10年続けるというのを目標にしていて。「もう歳だから腰が痛てぇ」って文句言って、歩くのがしんどくなって終わるみたいな、タモリさんでいうところの『タモリ倶楽部』的なものになりたいんです。そのうえで今回のゴールデンタイム移動をどう捉えるかっていうのがね……。
―――時間帯が変われば視聴者も変わりますし。
伊藤 深夜番組をやっていて感じるのは、小さなお子さんを抱えてらっしゃる主婦層だったり、20代後半から30代前半の『モヤさま』を面白いと思ってくれそうな人たちが、平日夜中の24時を過ぎちゃうと観てくれないって現実があるんですよ。そういう意味で深夜枠に満足しているわけじゃないんだけど、僕としては寝る前に30分くらい観て笑えるものがやりたかったというか、理解のあるスポンサーさんと一緒に番組を育てるみたいな、そういう非常にシンプルな構図をイメージしてたんです。
―――まさに『モヤさま』はそういう番組になりつつあります。
伊藤 それが日曜の夜7時ですよ?(笑) ただテレビ東京の社員として、やっぱりうちのバラエティ番組が持っている質感っていうのを、もう少しゴールデンタイムの視聴者に知ってもらいたい思いもあるんです。だとすれば『モヤさま』をゴールデンタイムでやってもいいじゃないかと。ああいう番組なので、子供からお年寄りまで楽しめると思うので、より知名度を上げるために移動するのはアリだなって。
―――深夜じゃなきゃできない番組かと言えば、『モヤさま』はそうではないですもんね。
伊藤 うん。そんなことを正月に考えていたら、妻が「いまだと観られないからゴールデンがいい」なんてことを平気で言うわけですよ(笑)。眠いんだと。
―――奥さんは伊藤さんの作る番組に興味があるんですか?
伊藤 一応あるんです。ただ、時間帯が持つイメージに興味がないというか、テレビを付けたら面白いことやってるぐらいの感覚しかない。
―――あー、うちも同じです(笑)。でも多くの視聴者にとってそれが普通ですよね。
伊藤 そうなんですよ。3歳の息子もね、会社に行こうとする僕に「大竹さんと三村さんと麻理子ちゃんと遊ぶの?」って必ず言うんです(笑)。息子はハードディスクに録ってるのを観てるわけですけど、「ああ、こういう感じで視聴者になっていくんだな」とか思ったり。
―――元々『モヤさま』って録画して後で観てる人も多い番組でしょうからね。DVDオンリーの人もいるし、深夜に放送しているからといって、必ずしも視聴者が深夜に起きて観ているわけじゃない。
伊藤 妻や子供のために番組を移動しようとは思わないですけど、テレビ東京に入社して15年間のなかで、今回が一番悩みましたね。前向きなんだけど答えが出せないっていうか。でもそうやって考えてるうちに、『モヤさま』がテレビ東京でバラエティ番組の旗印になるのも悪くないなと。それが1月くらいです。
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