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第5章 ゴールデンタイムの呪縛
―――『モヤさま』の話から少し外れますが、「深夜番組が人気を博してゴールデンタイムに移動する」という現象をもう少し伺いたいんですけど、移動が失敗した事例は各局に数え切れないほどありますよね。時間帯のイメージに合わせにいっちゃってるのが視聴者にも……。
伊藤 バレバレ(笑)。
―――はい(笑)。伊藤さんはこれまでのテレビ業界に延々と続く失敗を、どのように捉えているんですか?
伊藤 哀しいですよ。本当はこんなことをやりたかったんだろうけど、実際は全然違う番組になってるとか。作ってる人たち自身も面白くないだろうなって思いますし、最初の志はどこに行っちゃったんだよって。ゴールデンタイムで番組をやるっていうのは、それでもいいってことなのかなあと。
―――でも一方で、そうせざるを得ないスタッフの気持ちも分かる。
伊藤 わかります。うちの会社はまだゆるいほうですけど、似たようなものです。視聴率が少し下がったら慌ててテコ入れしろっていうのは、どこの局でもあることですから。でもそんなことをしてまで続ける必要はないんじゃないかなって思うんですよ。なんだろう……「ダメなら終われば?」って感覚に近いです。無理しないでいまの枠からサヨナラすればいいじゃないかと。もちろんそれが“負け”に見えない工夫が必要でしょうけど。
―――本誌88号掲載の対談でも語っていた、「失敗をどう評価するか」という話ですね。
伊藤 そうですね。でもなかなか難しいんですよ。厳しい場面でしか打席に立てないのが現状ですから。ほとんど「爆弾持って突っ込め!」って感じですよね。派手に爆発すればみんな「やった!」と喜ぶし、不発だったら「あーあ」って(笑)。それに加えて、ある種の既得権とか営業事情とかで、番組をやめたくてもやめられない状態っていうのもあるし。
―――でも伊藤さんの場合は、過去に『やりすぎコージー』(以下『やりすぎ』)が深夜からゴールデンタイムに移動していて、いまもそれが続いていますよね。『やりすぎ』の移動についてはどんなふうに考えていますか?
伊藤 あの番組に関して言えば、そもそも週の始まりである月曜の夜9時にやる番組なのか? という疑問はいまだにあります(笑)。でもチャレンジとか新規開発って、元々弱いところでしか試せないんですよね。視聴率で他局に勝てない枠。テレビ東京は後発なので、どの枠も他局が強いんですけど、そのなかでもとくに番組が根付かない枠で打席がくる。それが分かっていても覚悟してやるしかないんです。
―――「できません」じゃ済まないと。
伊藤 ええ。元々は今田さんや東野さんは『やりすぎ』を、深夜でずっとやっていける番組にしようって考えだったんです。でも、だからといって「ゴールデンタイムに移ったから終わりました」では、これまでの流れは変わらない。いろんな制約はありますけど、『やりすぎ』のような質感の番組をゴールデンで放送しているのは、テレビ東京にとって大切なことだと思います。
―――ゴールデンタイムに移動して1年半ですが、手応えはいかがですか?
伊藤 視聴率はそんなに良くないですけど、微増しているというか、だんだんベースが持ち上がってますね。DVDも累計60万本を売り上げてるし、ゴールデンに移ってからの売り上げもそんなに落ちてないんですよ。その意味では、好きで観てくれている人がちゃんといる番組になってきたと思いますね。
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