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深夜4時1分の、有安杏果 (page3/4)
そうこうしているうちに有安杏果がスタジオ入り。簡単な打ち合わせがはじまる。
「これは言葉でプロレスをする番組です」
以前、僕も出演させていただいたことがあるのだが、そのときは清野アナのこのひとことだけで打ち合わせが終わった記憶がある。プロレス者であれば、この言葉だけで、言わんとしていることはすべて伝わる。
しかし、杏果は「???」。
そりゃ、そうだ。というか、これが一般的なリアクションである。
仕切り直して、簡単に番組の流れを説明する清野アナだが、杏果はわかったようなわからないような表情をしている。その理由は打ち合わせを終えたあとに飛び出したひとことに凝縮されていた。
「人間ってさぁ、夜中の3時でもこんなに緊張するんだね。知らなかった!」
活動している時間によって、何時だろうと人間は緊張するよ、という無粋なツッコミはせずに、硬い表情のままスタジオに入っていく杏果を見送った。
深夜3時。
生放送のゴングが鳴る。
出だしはそんなに心配していなかった。つい2週間前に国立競技場大会を終えたばかりで、確実に盛りあがる鉄板ネタを持っているからだ。
しかし、緊張からか会話は弾まない。
じつは放送時間が『ももクロChan』とちょっとだけ重なるため(しかも、国立競技場の速報回)、同時に楽しんでくださいね、と煽るはずだったのに、その話を杏果は軽めに振っただけで終了。スタジオに設置されたテレビモニターでは、国立競技場の聖火が赤々と燃えあがるシーンが流れているのに、トークはシンクロしない、というもったいないなさ。
清野アナ曰く「試合開始早々、相手をロープに振ったのに戻ってこなかったような焦りを感じましたよ!」。眠くなってしまうのではないか、という不安とは、まったく違う種類の緊張感が走り出す。
小島和宏=文